朝夕は少し涼しくなりました
やはり縁日過ぎると秋風が吹きますね(まだまだ日中は暑いですが…)
昨夜は家の窓際の辺りから
チッ チッ チッ チッ … という音が
最初は何か電化製品のエラー音??
にしてはかわいい音なので
秋の虫みたい…
なんという虫か、ネットで調べたら
チッチッチッチッと鳴く虫 で簡単に出てきました
カネタタキというコオロギの仲間
鳴くテンポがゆっくりでしたけどね
秋の訪れです

今回は頭痛、高血圧の方のご紹介です

62歳 男性

以前よりたまに頭痛があるという方、
2年程前から少なくとも月に1回はきつい頭痛が起こるようになりました。
気持ち悪くなり吐き気が起こるときも、頭痛だけの時もあります。
また、若いころからは低血圧気味で全く気にしていなかった血圧が、3年前に検診を受けて血圧が高く
なっていることに初めて気が付かれました。
血圧は140~160/80~95ぐらいで、たまにふわっとめまいが起こることもあるとのことで、
頭痛と高血圧、めまいの相談です。
お聞きすると、胃腸が冷える食事も多く、ストレスも多い生活をされており、
また頭痛は気圧の変動も影響しているようです。
この方の場合、漢方的には頭痛は陽証も陰証もあり、脾虚の胃内停水が一番原因していると思われます。
漢方薬は本治部として脾虚と水毒の動揺を改善する薬方をベースに、頭痛の薬方を標治的に飲んで頂くことにしました。
血圧は飲み始めてひと月経たないうちに110~120/80~85ぐらいに下がり、頭痛も起こる回数が少なくなり
めまいはほぼ大丈夫とのことで、漢方薬は継続中です。

~~ちょこっと漢方薬のお話~~

頭痛に使う漢方薬に半夏白朮天麻湯があります。

薬味は 半夏、白朮、陳皮、茯苓、人参、生姜、蒼朮、麦芽、天麻、神麹、黄耆、澤瀉、黄柏、乾姜

薬味が多いのですが、
六君子湯 = 四君子湯(人参、白朮、茯苓、甘草、生姜、大棗)+二陳湯(半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜)より
甘草、生姜を去し
蒼朮澤瀉天麻黄耆、黄柏、神麹、麦芽、乾姜 を加えたものになります。

*神麹(しんきく)は小麦粉、フスマ、赤小豆、杏仁、青蒿、蒼茸子などから発酵させた麹で、消化酵素的な働きです

方意は六君子湯証が基本で、脾虚の胃内停水が上衝し、目眩、頭痛となった証で、
メニエール、耳鳴り、高血圧、心悸亢進、神経症 などにも応用できます。
こういう薬味が多い処方については、ベースとなる処方や薬味の組合せからの方意を考えて処方全体を理解します。

頭痛には川芎
高血圧には白芷や釣藤
副鼻腔炎に川芎、辛夷
を加えます

出典は脾胃論/李東垣(1180―1251)
李東垣は金元時代の大家で、有名な処方では他に補中益気湯や生脈散(内外傷弁惑論)も作方しています。
この半夏白朮天麻湯の条文は
范天騋之内素有脾胃之證… と書き出されているのですが
これは平素より胃腸が弱い范天騋夫人が初冬に外出し、寒さにあたり気分がすぐれず、下剤で誤治し、さらに嘔気、めまい、頭痛で非常に苦しんだ時に、色んな処方で治らなかったのを苦心してこの半夏白朮天麻湯を作方し、治すことが出来たという、夫人の症状をそのまま書いたものと言われています。

半夏白朮天麻湯は頭痛、めまいなどに頻用していますが、ずっと以前、私がまだ漢方の初学者で後世方の処方をあまり知らなかったころ、サト先生の師匠的な先生が「半白天は私は大好きですよ~」とおっしゃっていたことが印象に残っています。


(半夏白朮天麻湯/脾胃論 黙堂柴田良治処方集より)