「膝に水が溜まっていますね。」
病院でそう言われ、水を抜いてもらった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、右膝の痛みに悩まれていた60代女性の症例です。

膝に水が溜まるのを繰り返していた60代女性

数カ月前から右膝が痛み始め、歩くことも思うようにできなくなってしまいました。
病院では膝に水が溜まっていると言われ、水を抜く処置を受けると一時的には楽になります。
しかし、しばらくするとまた水が溜まってしまい、そのたびに痛みが強くなるという状態を繰り返していました。

「このまま何度も水を抜き続けるしかないのでしょうか。」
そんな不安を抱え、当薬局へ相談に来られました。

実は、水を抜いて一時的に症状が楽になっても、「なぜ水が溜まるようになったのか」という背景がそのままであれば、再び水は溜まってしまいます

例えるなら、床に溜まった水を拭き取っても、水道の蛇口が開いたままではまた水が溜まるのと同じです。
そこで、膝に溜まった水だけに対応するのではなく、水が溜まりやすい体の状態そのものを改善することを大切にしています。

膝に水が溜まるときの漢方の考え方

漢方では、膝の痛みは気・血・水の巡りの乱れによって起こると考えます。
中でも膝に水が溜まるような症状は、「水」の巡りが悪くなっていることが大きく関係している場合が多くあります。

本来であれば体の中を巡り、不要になれば排出されるはずの水分がうまく処理されず、一か所に留まることで膝に水が溜まり、腫れや痛みを引き起こしてしまうのです。

水の巡りの乱れは、膝だけではなく体全体に影響を及ぼします。
「足がむくみやすい」「尿量が多いまたは少ない」「冷え」「雨の日や湿気の多い日に症状が悪化する」なども、水の巡りが乱れているときに見られる代表的な症状です。
そのため、相談時には上記のような症状も確認し、水の巡りに乱れがないかを見ていきます。

この方には「足がむくみやすい」「冷え」「雨の日に症状が悪化する」など、典型的な水の乱れによる症状が見られました。
そこで水分代謝を整え、体の余分な水を自然に排出しやすくする漢方薬をお飲みいただきました。

漢方薬を服用後の経過

服用から1カ月ほどで「最近は膝に水が溜まりにくくなっています」と変化が見られ、2カ月目には痛みも軽減。これまで繰り返していた水の貯留も見られなくなりました。

3カ月目には「少し悪くなりそうな気がする」とお話しされる時期もありました。
しかし、当薬局で行っている糸練功で体の状態を確認したところ、大きな乱れは見られなかったため、処方は変更せず経過を見守ることにしました。

その判断どおり症状が悪化することはなく、その後も少しずつ痛みは落ち着いていきました。
そして服用開始から約1年後、ご本人から「もう大丈夫そうです」とのお声をいただき、漢方薬を終了しました。

膝に水が溜まると、「水を抜くしか方法がない」と考えられることも少なくありません。
もちろん必要な処置ではありますが、それだけでは繰り返してしまう方もいらっしゃいます。

漢方では、水が溜まった結果だけを見るのではなく、「なぜ水が溜まりやすい体になっているのか」という原因に目を向けます。
水分代謝を整え、体質から改善を目指すことで、膝に水が溜まりにくい状態へ導いていくことができます。

「何度も水を抜いている」「膝の腫れや痛みを繰り返している」という方は、一度体質という視点から見直してみることも大切かもしれません。