80代女性の方が、両ひざの痛みを訴えて来店されました。

かなり前から両ひざの痛みが続いており、歩く時だけでなく、寝返りをするときや階段の上り下りなど、日常生活のさまざまな場面で痛みを感じておられました。

整形外科では注射をしてもらっていましたが、思うように痛みが軽くならず、漢方で体の内側から整えてみたいと当薬局へ相談に来られました。

東洋医学では、ひざだけを見ない

東洋医学では、ひざが痛いからといって、ひざだけに原因があるとは考えません。

痛みは、「不通則痛(ふつうそくつう)」といって、気・血・水の巡りが悪くなることで起こる場合があります。また、「不栄則痛(ふえいそくつう)」といって、体を養う気・血・水が不足することによって痛みが起こる場合もあります。

今回のように長く痛みが続いている場合には、水の巡りが悪くなっていないか、体を支える力が不足していないかなど、その方の体全体の状態を見ながら考えていくことが大切です。

特に水の巡りが悪くなると、関節周辺に余分な水分がたまりやすくなり、ひざの腫れや重だるさ、痛みにつながることがあります。

また、ご高齢の場合や慢性化している場合は、体力が低下すること、骨や関節を支えたり、作り変えたりする力が弱くなることもあります。

そこで今回は、水の巡りを整える漢方薬に加え、体を元気にしながら骨の老化にも役立つと考えられる漢方薬を組み合わせました。

20日ほどで痛みが軽減

漢方薬を飲み始めてから20日ほど経った頃には、痛みがマシになってきたと感じられるようになりました。

さらに服用を続けると、1カ月半ほどで、寝返りをするときや歩く時に感じていた痛みがなくなりました。

そして2カ月半ほど経った頃には、「痛みは治ったような気がする」とおっしゃられるまでに改善されました。

かなり前から続いていた両ひざの痛みだっただけに、日常生活で感じていたつらさがなくなったことは、大きな変化だったと思います。

漢方はじわじわ効くとは限らない

漢方薬は、体質をゆっくり改善していくものというイメージを持っている方も多いと思います。

もちろん、長い時間をかけて体を整えていくケースもあります。

一方で、今回のように、その方の体質や症状に合わせて漢方薬を選ぶことで、比較的早い段階から変化が現れる場合もあります。

同じひざの痛みであっても、痛みが起こっている背景は人によって異なります。

だからこそ、痛みの場所だけを見るのではなく、体全体の状態を丁寧に見極め、その方に合った漢方薬を選ぶことが大切です。

今回の症例でも、体質に合わせて漢方薬を選ぶことで、長年続いていたひざの痛みに比較的早く変化が見られました。漢方薬の働き方は一律ではなく、その方の状態に合ったものを選ぶことの大切さを改めて感じた症例でした。