「飲んだ瞬間は効いている気がしないのに、体は良くなってる。不思議。今は特に気になる症状が無い。」

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の既往歴がある方で、昨年末に「なんとなくずっとしんどい。」とご来店されてから約3か月が経ち、先日そのようにお話しされました。

甲状腺機能障害は“甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)”と“甲状腺機能低下症(橋本病など)”に分けられます。
甲状腺機能亢進症の場合、動悸・ほてり・不眠・手足の震え・イライラ・軟便などが見られ、甲状腺機能低下症の場合は、寒がり・眠い・便秘・肥満・動作緩慢などの症状が見られます。共通症状としては、疲れやだるさなどです。

この方は、バセドウ病の治療を1年程された後、現在は年に1度の経過観察のみで様子を見ているとのことですが、だるさや不眠などの症状があって辛いとのことでした。

甲状腺機能障害を中医学的に考えると、大きく分けて“陰虚(体に必要な水分や物質が不足しているタイプ)”“陽虚(体を温めたり動かしたりする力が不足しているタイプ)”に分けられます。
お体の状態を総合的にみて判断しますが、どちらかというと、甲状腺機能亢進症の方は陰虚体質の方が多く、甲状腺機能低下症の方は陽虚体質であることが多いようです。
そして、陰虚体質の方には補陰剤と呼ばれる漢方薬を使い、陽虚体質の方には補陽剤を使います。

この方にも舌が真っ赤で乾燥傾向があり陰虚の状態が伺えたので、補陰剤をメインに血を補う漢方薬や気の巡りを良くする漢方薬をお飲みいただきました。
3か月ほど経ち、現在は特に気になる症状が無く、夜も以前は寝付くのに1~2時間程かかっていたのが30分程で眠れるようになったとのことです。
現在は、少しずつ漢方薬の量を減らしていっています。

漢方薬には飲んですぐに効果を感じるものと、長く飲むことで効果を感じるものがあります。
天気痛や風邪などの急性症状の場合は、漢方薬を飲んですぐに効果を感じる場合も多いですが、慢性的な症状や患ってから時間が経っている場合、どこが悪いのかよくわからない(いわゆる不定愁訴)の場合などは、ある程度長く飲んでいただく必要があります。
甲状腺機能障害も長期戦となる方に属します。

効いているかわからない漢方薬を、徐々に効いてくるのを待って飲み続ける。
これは非常に忍耐力が要ることだと思います。信頼関係があって初めて成り立つことです。
こちらを信じて飲んでくださる方を裏切らないよう、私たちは毎日技術力を磨くしかありません。