今まで本当に寒い毎日でしたが
やっと春らしい気候になりそうで一安心です。
花粉さえなければ、気持ちよく過ごせる季節ですね。

今日のお話は、重度の多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)(PCOS)の方のお話です。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、自分の力で排卵できず、排卵できたとしても年に1回~2回、当然排卵できないまま1年以上になることもある、そのような症状です。

元々、多嚢胞性卵巣症候群という名前からもわかるように、
一つの病名ではなく、
「ある症状を示す傾向にある人」の集団という位置づけです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)はしっかり原因が分からず、
〇〇病というはっきりした病気の扱いではありません。

診断基準として、

  1. 月経異常(無月経、希発月経、無排卵周期症)
  2. 血中男性ホルモン高値、または、LH高値かつFSH正常
  3. 両側卵巣のネックレス状の小卵胞の所見
    (少なくとも1つの卵巣に2mm~9mmの小卵胞が10個以上存在する状況)

上記3項目が当てはまった場合多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。

その他、診断基準には含まれませんが、

  • プロラクチン
    (PCOSではドパミン活性が低下し、プロラクチンが上昇することがあります。)
  • インスリン抵抗性(HOMA指数≧2.5)
    (空腹時血糖(FBS)と、空腹時インスリン値(IRI)からHOMA指数が算出されます。)

なども重視されます。

治療方法として、

  1. クエン酸クロミフェン内服による排卵誘発
  2. アロマターゼ阻害薬内服による排卵誘発
  3. インスリン抵抗性改善薬内服
  4. FSH低用量漸増法(注射による排卵誘発)
  5. 卵巣多孔術
    (腹腔鏡下により卵巣表面に穴をあける術式)

の治療方法があります。

多嚢胞性卵巣症候群の方が妊活治療で注意が必要なのは、

  1. 多胎になりやすいこと
  2. 流産率が高いこと
  3. 体外受精において卵胞数が多く卵巣過剰刺激症候群になりやすいこと

上記3点が一番の問題点です。

加えて妊娠後、妊娠糖尿病妊娠高血圧症候群早産による帝王切開率の増加も報告されています。

今までの多嚢胞性卵巣症候群の相談者様の中で、不妊治療で排卵誘発剤の注射を受けられ、卵胞数が多くなりすぎ治療中断したケースが何例かありました。
また体外受精でも、通常は10個から20個までの採卵の予定が、40個近く採卵することもあります。
卵巣の大きさは限られており、血管の数もいつもは1つの卵を育てるための準備をしているので、このような状況では一つ一つの卵が栄養不足になってしまって、卵のグレードが下がることは十分予測されます。

上記のことを考えると、
妊活中はもちろん、産後も漢方薬によってサポートすることの重要性を感じます。

多嚢胞性卵巣症候群の方のお話にもどりますが、
Hさんは、妊活相談に来られた時、
病院の排卵誘発の注射や、内服薬では排卵できない状況で、治療方法でご紹介した、5.卵巣多孔術の方法でしか排卵できない状況でした。

長い不妊治療の後、体外受精を2回実施した際に卵巣腫瘍がわかり、
悪性の危険性が高いということで手術、不妊治療を断念したとのことです。
多嚢胞性卵巣症候群では、悪性の卵巣嚢腫の発症率が通常よりも高いのです。
すでに結婚7年経過していました。

自然排卵を目指して漢方薬の服用を開始、胃腸の働きが悪く、腎の温陽の力が弱く身体は冷えており、
気血の流れが悪いことによって排卵できない様子があると判断いたしました。

長年の排卵障害のため、卵巣は肥厚している状況で、東洋医学では「痰濁」「瘀血」の状況だと判断します。
このような場合は、とにかく痰濁を取り除き、血液の流れを良くすることが大切ですが、
もとは生殖の働きを主る「腎」の弱りと、痰濁につながる「脾」の弱りですから、
脾と腎を補いながら、気血の流れを整えるうちに時々排卵が見られるようになったのです!

最初排卵した時は二人でとても喜んでおりました。
なにしろ、強い注射や、排卵誘発の内服薬でもなかなか排卵しなかった状況ですから、
とても驚くことだったのです。

Hさんは、自然に排卵するようになっただけでもとても喜んでおられましたし、
笑顔もあり、楽しく通っていただいたと思います。

3年経過した頃、
「体温計がおかしい、狂っているかも」
本当に不思議そうなご様子で来店され、体温表を拝見したところ、
もうこれは妊娠に違いないと思い、すぐ検査していただくようにお伝えし妊娠がわかりました。

重症の多嚢胞性卵巣症候群の場合、
先ほど挙げた注意点3点も大事です。

幸い漢方服用期間が長く、
妊娠されたころは、自然に排卵できるようになって体調も改善なさっていたからだと思っておりますが、
妊娠中の漢方薬服用の大切さもお話いたしながら、
ずっと漢方薬を続けていただき、トラブルもなく、無事ご出産なさいました。

結婚されて10年の年月が経っていました。
とても記憶に残る例です。

3月はずっと寒く、雪まで降って、2月より冬のような気候でしたが、
急にあたりは暖かくなってきましたね。

クロッカスが咲き始めました♪

去年は球根を植えっぱなしだったので
どうかなと思ったのですが
こうやって咲いている姿は本当にかわいらしいですね。
あたりが茶色なので
よけいに春を感じ嬉しくなりました