滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2020年8月分をご紹介いたします。

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今月は、第224回『子宝の悩みと周期調節法㉕~FSHが高くなる~』です。

-以下、記事本文-

「FSHが高くなって、卵が育ちません。」Sさんは、不妊治療の経過が思わしくないため来店されました。

FSHとは、卵巣刺激ホルモンのことであり、卵巣中の卵を育てるために、脳下垂体から分泌されるホルモンです。
卵巣の働きが弱っていたり、ストレスにより脳が興奮状況になったりするとFSHが高くなります。

30歳後半ごろから、卵巣の機能が弱くなりFSHが高くなる傾向にありますが、実際には個人差があり、Sさんは38歳でしたが、50mIU/㎖近く上昇し閉経直前の数値になることがあるとのことでした。

最近夜眠れないことが多く、気持ちが不安定になりがちです。
夜食べるのが遅いので、横になるのも遅く、朝すっきり起きられず、日中は生あくびが出ます。

卵巣の働きが弱っていることもありますが、眠りが悪く、脳が休まっていないため、FSHが上がりやすい状況が背景にあるようでした。
また食事を遅くに食べるため、胃腸の働きも弱っているようです。

睡眠をつかさどっているのは「心」、卵巣の働きを司っているのは「腎」であり、腎の働きを支えているのは「脾」の力です。

心と腎の働きが調和すると眠りの質が良くなります。
竜骨、牡蛎、琥珀、真珠などの「脳の興奮を鎮める働き」を利用して、心と腎の調和を図り、脾の働きを助ける人参、茯苓、陳皮などを複合した処方を続けられ、FSHが下がってくると同時に卵が育つようになり、1年後、体外受精で妊娠、無事出産されました。

滋賀夕刊掲載【第224回】漢方薬のおはなし