滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2022年12月分をご紹介いたします。
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今月は、第252回『女性の悩みと漢方~子宮腺筋症の痛み~』です。
-以下、記事本文-
雪が降り、冬の寒さも本格的になってきました。
急激な冬の訪れは、女性には厳しく、月経痛や、しもやけ、様々な体調不良が現れます。
月経痛の悩みは様々ですが、子宮内膜症、子宮腺筋症が原因の場合、あまりの痛さに気が遠くなり、身動きがとれなくなることもあります。
この二つの病気は、子宮内膜の組織が、内膜以外に増殖することが原因ですが、子宮腺筋症は、子宮の筋層内で子宮内膜の組織が増殖し、月経ごとに排泄されずに筋層内で増え続けるため、悪化すると月の半分以上を下腹痛に悩まされる例もあります。
東洋医学ではその状況について、痰濁や瘀血、陽虚などと考え、加えて瘀熱からの炎症でより激しい痛みになります。
血流を良くし、炎症を抑え、痰濁を除く袪邪(きょじゃ)が大事ですが、より大切なのは、病を治す力をつける扶正(ふせい)で、袪邪と扶正のバランスを調節しながら、処方を考えていきます。
44歳のMさんは月経の1週間前から下腹痛に悩まされ、月経時には、鎮痛剤を通常量以上服用してもひどい痛みが10日以上続きます。
舌は白く、気血不足と、陽虚がありますが、体温は不安定で、通常より高めです。
痰濁と瘀血、炎症を改善する生薬に、体を温め、気血を補う生薬を服用しました。
5か月後、鎮痛剤を服用せずに過ごせるようになっただけではなく、疲労感や冷えなども改善し、元気に過ごせるようになりました。
扶正とは、病を治す力を取り戻し、健康に導く手段です。ただ月経痛を治すだけではなく、元気を取り戻し、新たな病に至らないようにする、東洋医学の大切な考え方です。