滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2024年4月分をご紹介いたします。
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今月は、第268回『子宝の悩みと周期調節法㉞~卵巣チョコレート嚢胞~』です。
-以下、記事本文-
子宮内膜症は近年増加が指摘され、不妊症患者の25%~50%に子宮内膜症が認められます。
「子宮内膜症性不妊」として、不妊症の原因になると以前書きました。
その中で卵子の質や、卵巣予備能の低下につながる可能性があるのが卵巣チョコレート嚢胞です。
卵巣内で子宮内膜片が増殖し炎症を起こすことにより卵子の質に影響を与え、妊娠しにくい環境に至ると言われています。
30歳のKさんは右卵巣に4センチ弱の卵巣チョコレート嚢胞があり、結婚2年経ちますが子宝に恵まれないとのこと。
胃腸が弱く便秘、下痢など安定せず疲れやすい、冷え性、月経痛が辛く経血が暗く塊もあり、月経周期が不安定です。
子宮内膜症の原因である長期的な瘀血(血流が悪い)、痰濁(老廃物)の蓄積、長期的な気の不足、性腺軸の働きの低下(ホルモンバランスが乱れること)がすべてあてはまります。
胃腸の働きを良くする人参、茯苓、白朮を含む漢方薬、血を補い月経周期を整える当帰、地黄、阿膠を含む漢方薬、血の流れを良くし痰濁をきれいにする川芎、水蛭、三棱を含む漢方薬を中心に、周期調節法で服用するようにしました。
胃腸の調子は良くなり、身体が楽になり、月経周期も安定しました。
1年後に妊娠しましたが流産、その際に卵巣チョコレート嚢胞が無くなっていることがわかりました。
再度漢方薬を続け、4か月後再度妊娠、男の子を出産し、その後もう一人授かりました。
現代医学では、卵巣チョコレート嚢胞は治らない病気とされています。ただ、自然治癒力を取り戻すとこんなことが起こるのも漢方の興味深いところです。