日本不妊カウンセリング学会の一年に一回の学術学会でサト先生とミカホ先生が論文発表をしてきました。
何か月も前から二人とも発表のため結構大変な準備をしていました。
聞くところによると、今年が23回目ですが700名を超える出席で、今まで一番盛況だったとのこと。
当店で子宝漢方相談を本格的に始めて二十数年が経ちます。
この頃ではご相談にお越しになる方が、実は当店で漢方相談をされ授かったご夫妻の娘様ということが良くあります
体調相談だったり、子宝相談も…
私は婦人科系は担当しておりませんが、漢方の力が役に立ち、また信頼頂いていることをとてもうれしく思います。

さて今回は、首、肩、ひざの痛みのご紹介です。

70歳 男性

首筋が痛み、肩凝りもひどいとの事でご相談を受けました。
近頃は指先のしびれもあるとのこと。
指のびれは頸椎の変形が原因していることが多く、糸練功で診てみるとやはりそうです。
首の痛みも肩こりも同じ反応。
漢方薬は風湿の邪を駆逐し、気血の流れを改善する薬方を選びました。
4ヶ月程度の服用でずいぶん改善し、明るくお元気にお越しになられていました。
ところがその後、今度はひざの痛みがひどいとのこと。
首肩の具合が良くなったために畑仕事で無理をされてしまったのです。
ひざ痛には、脾胃の力を補い水分代謝を高め、気の流れを良くする漢方薬をお飲み頂きました。
当初2ヶ月間は首肩の漢方薬と併用し、ひざの痛みにはその後半年の服用でほとんど良くなりました。

(ボテジャコ掲載)

~ちょこっと漢方薬のお話「痛みの漢方薬」~

ひざ痛の漢方に関しては当店HP「膝の痛み」をご覧下さいませ

ひざ痛や腰痛、関節痛に使われる漢方薬の中に防己黄耆湯があります。
金匱要略が出典で
痙湿暍病に 風湿、脈浮、身重く、汗出で、悪風の者
水気病に  風水、後同上
風水とは脈浮、外証骨節疼痛して、 悪風
とあり、これより水毒の痛みに使います
薬味は 防已、黄耆、朮(蒼朮あるいは白朮)、大棗、生姜、甘草
朮は痛みには蒼朮を使います
防已は漢防已と木防已がありますが、現在流通しているのはほとんどが漢防已(オオツヅラフジの茎、根)です
防已についてはこちらの滋賀夕刊記事にも記載しており、オオツヅラフジは日本産で山間ではよく見ることが出来ます
オオツヅラフジを漢字で書くと大葛藤
同じ漢字を使う葛(クズ)の根は葛根(カッコン)
葛根も防已も蔓(つる)植物で水を通し、利水、鎮痛効果がありますが
葛根はご存じ肩こりや頭痛など、上焦の疾患に
防已はひざ痛や腰痛など、下焦の疾患に使うことが多いです
山野での生育を見ると、葛の花は上向きに、大葛藤の花は垂れ下がって下向きに咲きます
植物の生育状態と、生薬としての薬効が重なることが良くわかります

金匱要略には
喘する者には麻黄を加う とあり、防己黄耆湯加麻黄としてゼイゼイする呼吸器疾患に使えるのですが、
大塚敬節先生(1900~1980)が、奥様のお母様のひざ痛に防己黄耆湯を飲ましても効果が現れず、防己黄耆湯加麻黄にしたらとても効き、それからひざ痛でも陽証にはこの加味方がよく使われるようになりました。
また大塚先生のお弟子さんの山田光胤先生が合方で
防己黄耆湯合越婢加朮(苓附)湯 = 防己黄耆湯加麻黄、石膏、(茯苓、附子)
防己黄耆湯合桂枝加朮湯(苓附)湯= 防己黄耆湯加桂枝、芍薬、(茯苓、附子)
と工夫され、水毒の痛みに対して陰陽、虚実幅広く対応出来るように発展させました。

大塚敬節先生は防己黄耆湯をよく使われたのですが、ご自身、よく使うようになったのは
腹証奇覧翼/和久田寅叔虎著 の防己黄耆湯の記述を読んで理解できたからとおっしゃっています
腹証奇覧翼ですが
江戸中後期、腹証奇覧として稲葉克文礼が本編、弟子の和久田寅叔虎が翼(続編) を記述したもので、古方漢方の腹診を処方別に非常に詳細に書かれています。
防己黄耆湯の方、水気が皮膚に在つて腫るるが如く,或いは腫れているものを治す
防已を君薬とし黄耆を朮を臣薬とし、その方意は専ら正気を正しく運行させて、浮動している水気を廻らし下す…
(キリがないのでこの辺で…)