梅雨の前に夏がやってきたようなこの頃でしたが、そろそろ傘マークが多くみられる天気予報ですね。
湿度が高くなると体は重だるくなり、湿による体調の変調が増えてきます。
関節の痛み、しびれは水毒が原因することが多く、梅雨の時期は症状が悪化しやすいものです。

今回はリウマチによる手の痛み、しびれのご紹介です

67歳、女性

以前から手に痛みとしびれがあり、一年前より指の第二関節が変形してきました。
病院での診断はリウマチとのこと。
痛みと腫れがあるがあまり強い薬を飲みたくないとのことで漢方薬をご希望です。
リウマチの漢方療法は水毒が中心で急性炎症に対しての薬方と慢性炎症に対しての薬方の違いがありますが、両薬方をが必要な場合がほとんどです。
この方も二種類の漢方薬を服用頂きました。
一ヶ月で痛みが少し楽になり、3ヶ月目には痛みをあまり感じなくなりました。
その後症状の波はありますが、半年ほどで日常生活を全く不自由なく過ごすことが出来るようになりました。
漢方薬は安定してからさらに数か月飲んでから、減薬して症状再発の予防もかねて服用していくのがベストです。
(ボテジャコ掲載)

~~ちょこっと漢方薬のお話「痛みの漢方薬」~~

水毒の関節の痛みに良く使う漢方薬に麻杏薏甘湯があります

金匱要略 痙濕暍病 の 濕痹が出典です(濕=湿)
病者一身盡疼発熱日哺所劇者…
病者の一身(体中)尽(ことごと)く痛み、発熱し、夕方に激しき者を風湿と名づく。
この病は汗出でて風に当たり傷られ、或いは久しく冷を取りて傷られ致すところ也。
麻黄杏仁薏苡甘草湯を與うべし。
とあります。
汗をかいた後に風にあたったり、また長い間冷えたりして、熱と湿が停滞し筋肉や関節に疼痛が起こり夕方になると余計に激しいもの
といった感じでしょうか。
条文通りに解釈したり、色んな金匱要略の解説書や漢方の参考書等を読んで使おうとすると、痛みに対しては使う場合が案外狭まってしまうのですが、糸練功で診ると簡単ですし、関節の痛みには水毒の陽証の急性炎症にかなりこの薬方を使う機会が多いです。
また関節や筋肉が対象になり、効果がとても早く現れます
これは麻杏薏甘湯が効き目が良くて効果が速いということではありません。
(いや、もちろん効き目が良くて速いのですが…)
麻杏薏甘湯で効果が現れる痛みは、それほど深くない痛みだからです。
でも、深くないというのは症状が軽いというのではなく、逆です。
麻杏薏甘湯の痛みは激痛が多く、例えばぎっくり腰でも使う機会は結構あります。

薬味はその名の通り
麻黄、杏仁、薏苡仁、甘草  の4味
これは麻黄湯の桂枝を薏苡仁に変えたものです。
金匱要略の濕痹には
麻黄加朮湯、麻杏薏甘湯、防己黄耆湯、桂枝附子湯、甘草附子湯、白朮附子湯が書かれています。
また薬味的には麻杏甘石湯の石膏を薏苡仁に変えたものでもあります。

麻杏薏甘湯:麻黄、杏仁、薏苡仁、甘草(痛み…に)
麻黄湯  :麻黄、杏仁、桂枝、 甘草 (風邪…に)
麻杏甘石湯:麻黄、杏仁、石膏、 甘草 (咳…に)

漢方処方は一味の違いで方意が変わり、頻用の疾患も変わってきます
(経験上、麻杏薏甘湯加石膏はかなり多い印象ですが…)
これがまた漢方の面白いところで、漢方薬の方意を理解しないといけません。
麻杏薏甘湯は他に、皮膚病、イボなどに使うこともあります

ところで、昔、糸練功を使い始めたころ、麻杏薏甘湯証と越婢加朮湯証の区別がつきにくかった思い出があります。
越婢加朮湯:麻黄、石膏、蒼朮、生姜、大棗、甘草
麻杏薏甘湯:麻黄、石膏、杏仁、甘草
どちらも麻黄石膏剤で、その辺だったんでしょうね。
糸練功で診ると病者から離れていても腹診することが出来ますが、麻黄、石膏ともわかりやすいです。