ようやく梅雨入りしたようですね。
今年は短期集中とか…
試験勉強じゃないんですから
どうか災害が起こらないように祈ります
今回は不眠、頭痛、やる気がない… という方のご紹介です
75歳、女性
睡眠薬を長く服用しておられますが、夜中に目が覚め、それから寝られなくなるとのことです。
睡眠不足になり、頭全体がズーンと痛くなり、あまり食事も進まず、やる気が起きなくなってしまいました。
脳の検査もされましたが特に異常がないため、漢方薬をお求めになられました。
この方は五志の憂が左脳優位型で、特徴は夜中に目覚めると意識がはっきりとしてしまい、それから寝付けなくなります。胆系の気の停滞を起こし自律神経のバランスが崩れたようです。
頭痛は自律神経のバランスの崩れとは別で、腸の冷えからくる水分代謝異常が原因のようで、それぞれに漢方薬をお飲み頂きました。
一ヶ月目には目覚めてもすぐに寝られるようになり、その後も経過はとても良好で、食事もおいしく食べられ、頭痛も治まり、7ヶ月で漢方薬はやめることが出来ました。
(ボテジャコ掲載)
~~ちょこっと漢方薬のお話「こころの漢方薬」~~
精神神経症状に使う漢方処方に四逆散があります。
出典は傷寒論の少陰病に出てきますが、三陰三陽で考えると薬味的には四逆散は少陽病の薬方です。
四逆散:柴胡、枳実、芍薬、甘草 の4味
四逆散は大きく二つの使い方が出来ます
まずは少陽病の柴胡剤としてですが、本来の柴胡剤は柴胡+黄芩で中焦の清熱をはかりますが、四逆散は黄芩が含まれません。
いわゆる柴胡剤を虚実で
大柴胡湯-柴胡加竜骨牡蛎湯-四逆散-小柴胡湯-柴胡桂枝乾姜湯-補中益気湯
という実→虚の順序で言う事がありますが、少陽の慢性病のベース処方として四逆散を使う時は、体的にはそんなに実証ではありません。枳実が含まれるため、気満、気滞を取る力が強く、気の実証と言えます。
大柴胡湯:柴胡、枳実、芍薬、黄芩、半夏、大棗、生姜
四逆散 :柴胡、枳実、芍薬、 甘草
とみると大柴胡湯の変方でもあります。
胃腸疾患、肝胆疾患、肺、腎などに柴胡剤として、また上焦の疾患にも使えます
四逆散はもう一つの使い方、精神神経症に対して漢方のトランキライザー的な使い方も効果的です。
神経過敏症、鬱傾向、自律神経失調症、不眠症…など、精神神経症を考える場合、大きく血か水か、そして右脳型、左脳型かというとらえ方をすると薬方が絞りやすくなります。
右脳優位型は感覚的、直感的、芸術家タイプ…
左脳優位型は論理的、正論的、学者タイプ…
これでいくと、四逆散は典型的な左脳型の血毒になります
ちょっと難しい顔をした硬い感じで、理論的で几帳面、主張が強く、ちょっと理屈っぽい…
夢はあまり見ず、眠り深いタイプ こんな感じが四逆散
神経過敏になり緊張すると交感神経が興奮し、末梢の血管が収縮して血流が低下、四肢厥逆(冷え)を起こします。
傷寒論では 少陰病、四逆、其の人或いは~~~四逆散之を主る という条文で、四逆というのは四肢の厥逆です
四逆散タイプは緊張で手足先が冷えたり手汗をかくこともあります。
傷寒論には本来の少陰病の薬方に四逆湯(甘草、乾姜、附子)がありますが、四逆散とは全く違う処方で、使い方も大きく異なります、これについてはまた別の機会で…
四逆散に香附子、青皮、川芎の気剤を加味すると柴胡疎肝散(医学統旨-葉文齢)となり、四逆散より人当たりが良い感じになります。
東洋医学には七情の内傷なければ、六淫の外邪犯さずという概念があります
七情=怒喜憂思悲恐怖 六淫=風寒暑湿燥火
精神的な憂いが体の免疫力を落とし、多くの病いの原因になる という事です
色んな悩みや症状に精神的ストレスが大きく影響しているときは、漢方薬でそのストレスのフォローもしないといけません。
漢方薬を選ぶ際に性格的な事に関連付けると効果的で、養生法の参考にもなりますが、
その人が持つ元々の性格的なものが、悩みの症状の原因となっている時と、そうではないときがあります。
この見極めは大切です。