この時期で30度越えどころか40度近いというところも…
危険な暑さなんていう表現は以前は聞いたことなかったですね。
熱中症で運ばれる方がとても多いとのこと
どうかご注意下さいませ。

今回は気分の落ち込みの方のご紹介です

気分の落込み、痛み、胃腸が悪い…

50歳、女性

数ヶ月前から体調が悪く気分がすぐれず、体のだるさがあります。
体中のあちこちが痛くなり、胃腸の調子も悪く吐き気がする日もあります。
病院で色々検査するも異常は見られませんでした。
仕事は無理して出来ているが、漢方薬で何とか楽になりたいとの事でした。
この方は精神神経系のバランスのくずれから五臓の気の不和が起こっていると思われ、胃腸の症状も体の痛みも同じ原因である、 五志の憂から来ていると考えられました。
このため漢方薬は諸処の気の不和を整える煎じ薬と粉薬を服用頂きました所、2か月目では色々な症状も安定し、ずいぶん元気に動けるようになっています。
東洋医学では七情(怒喜憂思非恐驚)の内因なければ六淫(風感暑湿燥火)の外邪犯さずといい、心の大切さを説いています。
(ボテジャコ掲載)

~~ちょこっと漢方薬のお話 「こころの漢方薬」~~

精神神経系に使う漢方薬に半夏厚朴湯があります。

出典は金匱要略 婦人雑病
婦人咽中如有炙臠半夏厚朴湯主之
(婦人の喉に炙った肉が引っかかっているようなのものは半夏厚朴湯が主治する)
千金作胸満心下堅咽中帖帖如有炙肉吐之不出呑之不下
(千金方)(胸が張ってみぞおち周辺が堅くなり、咽の中に炙った肉がついて離れないような感じで、吐き出しても出ず、呑みこんでも呑めない)
とあります。
勿誤薬室方函口訣で
此ノ方ハ「局方」四七湯と名ずく。気剤の権輿なり」。故に梅核気を治するのみならず、諸気疾に活用してよし。
「金匱」「千金」に据えて婦人のみに用ゆるは非なり。蓋し婦人は気鬱多き者故、血病も気より生ずる者多し。
と述べています。
いわゆる咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)、梅核気はヒステリー球(=咽喉頭異常感症)の事です。

薬味は
半夏、茯苓、厚朴、蘇葉、生姜
で、小半夏加茯苓湯(半夏、茯苓、生姜)/金匱要略)に厚朴、蘇葉を加えた処方です。
小半夏加茯苓湯で脾胃の水(胃内停水)をさばき、悪心、嘔吐、胃腸虚弱などを改善し、厚朴、蘇葉で気滞を発散します。
応用は
不安神経症、咽喉頭異常感症(神経性食堂狭窄症)、神経性胃炎、喘息、バセドウ病、橋本病、腎炎、ネフローゼ…
長引く咳や喘息には柴胡剤、麦門冬湯、茯苓飲などと合方します。

浅田宗伯が気剤の権輿なりと述べているように、半夏厚朴湯は気滞の基礎の薬方です。
気剤の薬方は生薬の質がとても大事で、
効き目に違いが出てしまうため、産地や収穫時期、保存法などにこだわらないといけません。
厚朴は朴の木(ほうのき)の樹皮で日本産を和厚朴、中国産を唐厚朴といい、唐厚朴の方が香りが強く、上品です。は筋弛緩作用があり、胸腹の張満を除きますが
蘇葉は紫蘇の葉ですが、食卓で使う大葉(青紫蘇)ではなく赤紫蘇です。紫蘇についてはこちらを~
また、半夏はそのままでは粘膜に刺激性があり、多くは生姜と配され、同時に煎じることにより刺激性がなくなります。

半夏厚朴湯の本質は水滞と気滞で、右脳優位型の水毒タイプになり
神経質、思い込みが強く、取り越し苦労の多い方です。
また物事がなかなか決められないところがあります。
精神的に繊細でデリケートなのですが、また肉体的にもデリケートの傾向があり、アレルギーなどに気を使う必要があります(蘇葉の証)

半夏厚朴湯は
七気湯、大七気湯、四七湯(易簡方/王碩)の別名がありますが
七気とは怒喜憂思悲驚怖の七情の事です。


勿誤薬室方函口訣/浅田宗伯 より)