パリオリンピックで睡眠不足になる方もおられるのでしょうね
自分の興味のある競技や選手が出ていると…
私は正直な所、始まる前までは今回のオリンピックにはさほど注目していなかったのですが
競技を見だすとやはり熱中してしまいますね
やはり夏は熱中症に注意です…
違うか…

今回は強迫性障害、パニック、精神不安症のご紹介です

34歳 女性

20年近く前、高校生の頃から精神科に通院中です。
特に生理の始まる10日ぐらい前になると精神不安になり、暴言や暴力を振るうようなパニック症状も発症し、現在は体重増加もひどく、生理の後もイライラ等がきついとの事。
調子が悪いときはドアの鍵を何度も確認したり、水道の蛇口、履く靴の確認など強迫性障害の確認行動も強く出てしまいます。
精神安定剤やピル等の服用で、ある程度治まるが副作用もきつく長期になるので漢方薬の助けも借りたいと来店されました。
この方には精神安定の安神剤、気の巡りを改善する理気剤、血を補い血熱をさます薬方等を服用頂きました。3ヶ月目から生理後のイライラ等が治まってきました。
1年ぐらい後には確認行動の症状がまたでたりしましたが漢方薬で対処して、ずいぶん落ち着いて生活できるようになりました。
(ボテジャコ掲載)

~~ちょこっと漢方薬のお話 「こころの漢方薬」~~

精神神経系に使う漢方薬に柴胡加竜骨牡蛎湯があります

神経症、不安症、統合失調症、強迫神経症、円形脱毛症、癲癇、高血圧、脳卒中、耳鳴り、更年期、バセドウ病、心臓疾患…
などに応用できます

出典は傷寒論で
傷寒八九日下之胸満煩驚小便不利譫語一身盡重不可轉側者柴胡加竜骨牡蠣湯主之
(傷寒にかかって八九日経ち、下したところ、胸が張り苦しがり、悶え驚き、小便が出ず、うわごとを言い、全身が重く、寝返りできないようになったものは柴胡加竜骨牡蠣湯が主治する)

原典ではこのような訳になりますが、内攻する熱がこもり、気がふさがって起こる症状と解釈し、精神神経症全般に使えます。
薬味は 柴胡、黄芩、半夏、人参、茯苓、桂枝、生姜、大棗、竜骨、牡蛎、大黄
(原典の傷寒論にはさらに鉛丹が加わっていますが、現在では使われません)
と古方の処方の中ではかなり薬味が多いです

薬味的には
小柴胡湯に桂枝、茯苓、竜骨、牡蛎、大黄を加え、甘草を去したもの
大柴胡湯に桂枝、茯苓、竜骨、牡蛎、人参を加え、芍薬、枳実を去したもの
柴胡桂枝湯に茯苓、竜骨、牡蛎、大黄を加え、芍薬、甘草を去したもの

柴胡・黄芩:胸脇の熱証
竜骨・牡蛎:精神安定
桂枝:気の上衝
茯苓:心悸亢進、水毒
茯苓・半夏・生姜:胃内停水、鎮静
大棗:緊張緩和、心脾を補う
方意は 少陽の弱実証の気鬱
となります

竜骨牡蛎が入るため、漢方の初心者向けに
実証が柴胡加竜骨牡蠣湯、虚証が桂枝加竜骨牡蛎湯 と解説されたものが以前はありましたが
虚実で言うと
柴胡加竜骨牡蠣湯の虚証は柴胡桂枝乾姜湯(柴胡、黄芩、桂枝、括桜根、牡蛎、乾姜、甘草)になります
浅田宗伯(1815-1894)は勿誤薬室方函口訣で
柴胡桂枝乾姜湯と紛れやすし、何れも動悸を主とすればなり、蓋し姜桂(柴胡桂枝乾姜湯)は虚候に取り、此の方(柴胡加竜骨牡蠣湯)は実候に取りて施すべし
と述べています

柴胡加竜骨牡蠣湯は柴胡剤なのですが、右脳優位型の血毒タイプになります。

この方は糸練功による腹診を理解するのにとても良い薬方で

柴胡:胸脇苦満
黄芩:心下痞鞕(黄芩の位置)
半夏:胃内停水(陽)
茯苓:胃内停水(陰)
桂枝:心(陽)
人参:心(陰)
大棗:心(陰)
牡蛎:臍上動悸
竜骨:臍下動悸

と薬味のほぼ全部を腹診で確認することが出来ます


勿誤薬室方函口訣/浅田宗伯 より)