熱戦の繰り広げられたオリンピックも終わり
南海トラフ地震に関してもとりあえずは大丈夫そうですが
色々と備えをしないといけないようですね…
今回は幼少の頃よりの慢性頭痛の紹介です
20歳 女性
幼少の頃から頭痛があり、しばらく治まっていたのが数年前からまた出てきてしまいました。
こめかみ辺りからの痛みがひどく数日続きます。
鎮痛剤を飲んでも良くならず、痛みで何もできなくなってしまうため、心配になり病院でMR検査などをするも異常は無いとの事でした。
肩こりはずっとありますが、ほぐしても頭痛は良くならないとお困りです。
この方の頭痛は胃腸の冷えが大きく影響していると思われ、胃腸を温め、気の上昇を整える漢方薬を2種類服用いただきました。
効果はすぐに現れ、3週間でかなり楽になり、2か月目には7割方改善しています。
このタイプの頭痛は多く、食養生としてもできるだけ胃腸を冷やさないよう注意することが大切です。
(ボテジャコ掲載)
~~ちょこっと漢方薬のお話~~
頭痛の漢方薬に呉茱萸湯があります
薬味は 呉茱萸、人参、生姜、大棗
主薬の呉茱萸は薬性が大熱で生薬の中でも最も熱性の強い生薬です(生薬では呉茱萸と附子が最も温める力が強い)
(呉茱萸についてはこちらもどうぞ)
人参(白人参)、生姜、大棗も温性です
方意は裏(脾胃)の寒飲の上逆(胃の冷えからの水毒の上逆)
偏頭痛、嘔吐、乾嘔、眩暈、癲癇(小発作)潰瘍、しゃっくり… などに応用できます
嘔吐は吐いてもスッキリせず、余計に苦しく、胆汁まで吐くこともあります。
いわゆるオエ~ッ、オエ~ッと続けて苦しむタイプで、吐くものはなくからえづきもあります。
頭痛、嘔吐に 陰の呉茱萸湯、陽の五苓散 なのですが、近頃は二方を同時服用させることもあると…
陰証と陽証が同時というのは漢方理論的におかしいのですが、実際の相談ではこの二証が糸練功で本当に確認できる方があります。
出典は傷寒論、金匱要略で
食穀欲嘔者属陽明也呉茱萸湯主之得湯反劇者属上焦也/傷寒論 陽明病
(穀物を食べて嘔きたくなるのは陽明に属する。呉茱萸湯の主治である
呉茱萸湯を用いて返って吐き気がひどくなるものは上焦に邪がある)
少陰病吐利手足厥冷煩躁欲死者呉茱萸湯主之/傷寒論 少陰病
(少陰病で嘔いて下痢し、手足の先から冷たくなり、手足をバタバタとして悶え死ぬ方がましだというような者は呉茱萸湯の主治である)
乾嘔吐涎沫頭痛者呉茱萸湯主之/傷寒論 厥陰病
(からえずきして、よだれやつばを吐き頭痛のあるものは呉茱萸湯の主治である)
嘔而胸満者呉茱萸湯主之/金匱要略
(嘔いて胸が張ってくるくるものは呉茱萸湯の主治である
~ちょっと話はずれますが…~
傷寒論の呉茱萸湯は上記のように陽明病、少陰病、厥陰病篇に記載されています。
そこから色んな古方の薬方解説書に呉茱萸湯は少陰病、厥陰病と書かれていることが多いですが…
呉茱萸湯の寒飲は深く(裏寒)虚証ですが、附子剤までは落ちてなく、太陰病の薬方です。
三陰三陽に関しても漢方の流派によって違ったりするのですが、私の師匠は浅田流のとらえ方に近く、また浅田流がとても理解しやすいと思います。
浅田流の大きな特徴の一つは
傷寒雑病とも三陰三陽の病位を定むべきこと。
良く金匱を読まざれば雑病に三陰三陽をあるを知らず。
と、雑病(傷寒以外の疾病)にも三陰三陽の病位があるとし、
慢性病にも三陰三陽の判断の物差しを活用して薬方を選択します。
実際のところ、すべての慢性病に応用するわけではありませんが
漢方的に病態を理解する上でも、薬方を理解する上でも、とても役立っています。
古法(方)を主として後世方を運用すべき事
浅田流の基本です。
(栗園醫訓五十七則/浅田宗伯 より)