朝晩は涼しく(というか結構肌寒いくらい)なりました。
秋は小さくなりすぎて見つけられないのかと心配しましたが
何とか一安心です

今回は難治性湿疹の62歳の男性のご紹介です

手の湿疹に2か月前から市販の塗り薬を使っていたら、全身に広がったという方。
元々5,6年前にも湿疹が出ましたが、なんとか治まっていました。
ステロイド軟膏で治まらないとの事で、民間療法もいくつか試されましたが効果があまりありません、。
湿疹は赤く盛り上がり炎症が起こっているようで、リンパ液が出てそれが乾燥して痂皮が出来ているところもあります。
見た目にくらべかゆみがあまりないとの事で幸いです。
この方には袪風化湿、清熱解毒、養血等の働きのある薬方を選び、煎じ薬でお飲み頂きました。
最初の1~2か月は薬方を少し変更しましたが、3か月目からは順調に改善して、9か月服用頂きやめることが出来ました。


((初回来店時)


(7か月後)

~~ちょこっと漢方薬のお話~~

皮膚病に使う漢方薬に消風散があります。

薬味は 当帰、乾地黄、石膏、防風、蒼朮、牛蒡子、木通、蝉退、苦参、荊芥、知母、胡麻

出典は1600年頃に書かれた外科正宗で、薬味が多いです
血熱に対して苦参、知母、蝉退、石膏
血燥に当帰、地黄、胡麻
風湿に荊芥、防風、牛蒡子、木通、蒼朮、蝉退

方意は風湿、血熱の湿疹、皮膚病です
風湿熱のために夏場に悪化することが多く、発赤、熱感、掻痒感が激しい事が特徴です。
また、濃厚で多量の分泌液が出ている場合があります。

湿疹には皮膚の状態が乾燥しているか、湿潤しているかの燥湿という判断基準(ものさし)を使うことが多いです。
(漢方の証の判断には表裏、寒熱、虚実、三陰三陽、気血水、燥湿 等があります)
消風散は湿に対する薬方で、湿疹、アトピー、汗疹、ストロフルス、掻痒症、乾癬などで湿潤している場合に使います。
分泌液が出て痂皮が作られるため燥症に見えることがありますが、基本は湿の湿疹です。
また白癬菌、カンジタ菌など真菌感染を起こしている皮膚は消風散症を呈します。

湿の湿疹には他に越婢加朮湯や桂枝加黄耆湯がありますが
越婢加朮湯証は消風散よりも湿度に敏感に反応し、春先から悪化することがあります、消風散証は梅雨前後から悪化する傾向です。また越婢加朮湯や桂枝加黄耆湯は水毒ですが、消風散には血毒が入ります。
当帰飲子温清飲は血毒の燥の湿疹です。

また合方で温清飲や十味負敗毒散と使用する事もあります
皮膚病は皮膚面の見極めが大切です。

薬味の一つ、蝉退(せんたい)は蝉の抜け殻です。
訂補薬性提要には 甘寒、風熱を除く、目翳を除く、皮膚掻痒を治す と述べられています
日本の常用薬方ではこの消風散だけに用います。
蝉退には解熱の効もあるため、昔は民間薬の解熱剤としてセミの抜け殻を煎じて飲まれていました。
私がまだ4,5才だった頃(だと思いますが)、まだお店を母屋(現在ギャラリーとなっているところ)でしている頃、
お客様がセミの抜け殻を買いに来て、親父が秤売りしていた記憶があります。
ある時、子供が紙袋一杯にアブラゼミの抜け殻をお店に持ってきて(売りにきて)
親父が 「はい、50円」(5円だったか?今となっては記憶があいまいですが)と、お金を渡していたのが思いだされます。
現在の蝉退の価格は当時とは隔世の感があります…