前回の記事では、生殖遺伝や着床前遺伝学的検査(PGT)について学んだ内容をご紹介しました。
今回ご紹介したいのは、講義の最後にお話しされていた「生殖医療と漢方の連携」についてです。
私は20年以上にわたり不妊相談に携わってきましたが、生殖医療専門医の先生が漢方との連携についてどのように考えておられるのか、大変興味深く拝聴しました。
不妊クリニックにも様々な考え方がある
講師の先生は、
「不妊クリニックの中には漢方に否定的な考えを持つ施設もある」
と前置きされたうえで、
「私は漢方の先生との連携プレーがとても大切だと思っている」
とお話しされました。
前回ご紹介した生殖遺伝や着床前診断のお話とはまた違った視点から、
漢方相談との連携に価値を感じておられることが大変印象的でした。
病院で使う漢方と専門薬局の漢方
病院で処方される漢方薬は、
いくつかのメーカーが製造している
エキス製剤が中心です。
成分が一定で使いやすい反面、
患者さんの状態に応じて細かく加減することは容易ではありません。
より個別性の高い対応には限界があります。
一方で漢方専門薬局では、
体質や症状の変化を見ながら、豊富な種類の漢方薬から
より細かく選ぶことが可能です。
講師の先生は、
「漢方は本来、証を見ながら使うもの」
患者さんごとの細かな調整は漢方専門薬局の強みであると話されていました。
漢方と体外受精の相乗効果
講師の先生は、実際に漢方薬局の先生方と連携して取り組んだ難治症例についても触れられ、
漢方を併用することで良い結果につながった症例が何例もあったことを紹介されました。
そして、
「体外受精と漢方には相乗効果が期待できる」
という考えを示されていました。
特に期待される点として、
・卵子の質の向上
・精子の質の改善
・不妊治療によるストレスの軽減
・気血水のバランス調整
などを挙げられていました。
生殖医療による治療と並行して身体全体の状態を整えていくことは、大きな意味を持つと考えておられるようでした。
私が特に印象に残ったお話
講師の先生が評価されていたのは、
・ホルモン値
・卵胞の発育状況
・子宮内膜の状態
・採卵のタイミング
・移植のタイミング
などの情報を共有しながら、
その時々の状態に合わせて漢方を調整していくことの重要性を話されていました。
実際に先生が連携していた漢方薬局では、
患者さんが病院で受けた検査結果を漢方薬局へ伝え、
その情報をもとに処方を調整していたと話されました。
これについては、私もとても大切にしているところで
ホルモン値や卵胞の発育状況、
採卵や移植の予定などを確認しながら、
その時々の状態に合わせて
漢方薬の服用方法や内容を調整することで、
より良い結果につながることを実感しています。
講師の先生も、このような連携によって
「不妊治療の成功率が上がっていると実感している」
とお話しされていました。
生殖医療と漢方相談が、それぞれの強みを活かしながら情報を共有し、連携していくことの大切さを改めて感じるお話でした。
漢方の役割は生活習慣へのアプローチ
講師の先生が最後に話された言葉がとても印象的でした。
それは、
「西洋医学だけでは生活習慣を変えることは難しい」
というお話です。
不妊治療では、
採卵や移植などの医療技術はもちろん重要です。
ただ
・睡眠
・食事
・冷え
・ストレス
・疲労
なども無視することはできません。
こうした部分を支えられるのが、漢方相談の大切な役割なのだと改めて感じました。
生殖医療の分野では、卵子の老化や染色体異常は主に年齢の影響によるもので、生活習慣の改善だけで大きく変えられるものではないという意見もあります。
そのような中で、今回、生殖専門医の立場から漢方や生活習慣へのアプローチの意義についてお話を伺えたことは、私自身とても勇気をいただける内容でした。
私たちが大切にしていること
先ほどもお話しましたが、私たち不妊相談員は、不妊治療を受けられている方には、
病院の検査結果や治療方針をできる限り共有していただきながら漢方相談を行っています。
ホルモン値や卵胞の状態、採卵や移植の予定などを参考にしながら、その方の体調や体質に合わせてご提案をしています。
今回、生殖医療専門医である講師の先生のお話を伺い、
病院と漢方薬局がそれぞれの得意分野を活かしながら連携していくことの大切さを改めて感じました。
これからも、生殖医療の先生方と連携しながら、不妊で悩むご夫婦のお力になれるよう努めていきたいと思います。






