今日は天気に恵まれ、賤ヶ岳の山頂まで足を運んできました。
シャガの花が一面に咲き、とても美しい季節です。

歩きながら思い出したのは、以前ご相談に来られたMさんのことでした。
「子宮内膜が薄い」と病院で言われ、妊娠は難しいかもしれないと告げられた方のお話です。


■ 2回の流産と、4ミリの子宮内膜

Mさんは40歳近くでご結婚され、2回妊娠されましたが、どちらも心拍が確認される前に流産。
その後、月経量が明らかに減り、半年経って病院を受診されたときには、子宮内膜の厚さが4ミリと診断されました。
医師からは「このままでは妊娠は難しい」と伝えられ、不安を抱えてご来店されました。


■ 子宮内膜が薄くなる原因とは

理想的な子宮内膜の厚さは10ミリ前後、少なくとも7ミリ以上は必要とされています。
流産後に内膜が薄くなる原因として、西洋学的には以下のようなものが考えられます:

  1. 子宮内膜の損傷

  2. 子宮内腔の癒着(アッシャーマン症候群)

  3. 子宮内の慢性的な炎症による免疫異常

Mさんの場合、最も心配されたのは①の損傷ですが、基礎体温の波形も乱れており、③の慢性炎症も疑われる状態でした。
顔色も悪く、いつも疲れたご様子が印象的でした。


■ 子宮内膜を育てる力を高めるために

私は、Mさんの体質を整え、子宮内膜を育てる力を養うために、気血を補う漢方薬を中心にご提案しました。
特に「黄耆(おうぎ)」には、気を補い、肌や粘膜の再生を助ける「生肌(せいき)」の働きがあります。

また、**当帰(とうき)**を含む漢方で血の巡りを良くすることで、子宮への栄養供給を助けました。
これは、内膜を厚く育てるうえでとても重要な要素です。


■ 少しずつ、けれど確かな変化

漢方の服用を始めて3か月ほど経った頃から、少しずつ月経量が回復し始め、基礎体温も安定してきました。
体が内側から整っていくのを、一緒に感じられたのが印象的でした。

年齢のこともあり、「改善には1年以上かかるかもしれない」と思っていたのですが、驚いたことに服用から7か月後に妊娠され、その後元気な赤ちゃんを無事に出産されました。


■ 子宮内膜の厚みと妊娠の関係

もちろん、すべての方がすぐに結果が出るわけではありません。
子宮内膜の傷や癒着、炎症の状態によっては、改善に時間が必要な場合もあります。

ただ、昨年の不妊カウンセリング学会で発表された報告(私もデータ提供に協力させていただきました)によれば、
漢方薬の服用によって薄い子宮内膜が有意に厚くなったというデータが得られています。

子宮内膜の薄さで悩む方にとって、これは大きな希望の一つになるのではないかと思います。


■ 最後に

子宮内膜が薄いという悩みは、簡単に解決できるものではありません。
でも、それが「妊娠できない」という意味ではないということ。
そして、体の整え方次第で希望につながる道があるということを、Mさんのケースは教えてくれました。

妊娠しにくい=妊娠できない
ではない——
この事実を、これからも必要な方に、丁寧に伝えていけたらと思っています。