滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2025年3月分をご紹介いたします。
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今月は、第280回『子宝の悩みと周期調節法㊱~漢方で支える高齢妊娠~』です。
-以下、記事本文-
「病院でいろいろ試してみたけれど、なかなか結果が出ない」──そんな不安や焦りを抱えて、相談に訪れる方の多くは、35歳以上のいわゆる“高齢”に分類される女性たちです。
晩婚化、女性のキャリア志向の高まり、経済的事情などから、妊娠・出産のタイミングが年々遅くなる中で、「不妊」「高齢妊娠」は今や社会全体の課題とも言えます。
昨年、不妊カウンセリング学会において、「中医学・漢方薬を取り入れた高齢妊娠症例から見えてきたこと」と題した論文の発表がありました。
当店もその研究に、過去10年間のデータを提供する形で協力させていただきました。
この論文では、5つの薬局における642名の高齢妊娠データから、出産まで記録が残る321名の情報をもとに、不妊原因や服用された漢方薬、妊娠までの期間、子宮内膜の厚さの変化、妊娠中のトラブルの有無、出産時の状況などが統計的に分析されました。
とくに注目すべき結果として、子宮内膜の厚さが、漢方薬の服用前平均5.6mmから、服用後は8.6mmまで改善し、明らかな有意差が認められました。
また、妊娠中のトラブルに関しても、たとえば高齢妊娠で懸念される妊娠糖尿病は、全国平均では発症率7~12%とされていますが、今回のデータではわずか4.4%。
妊娠高血圧症についても全国平均8%に対して3.1%と、リスクの軽減が示唆されました。
漢方だけですべてが解決するわけではありません。しかし、西洋医学とは異なる角度から体のバランスを整えることで、不妊や高齢妊娠のトラブルを軽減できる可能性があるのなら、それは多くの方にとって希望の光になるはずです。