昨年、不妊カウンセリング学会で症例発表をさせていただいた際、ご協力くださったお客様から、とても珍しく素敵な色の紫陽花をいただきました。
それはまるで、感謝や願いのこもった「命の贈り物」のようでした。
大切に育てた紫陽花は、今年も無事に花芽を付け、大きく成長してくれています。
命が静かにつながっていくようなその姿に、私は毎日、そっと心を寄せています。

黄体ホルモン機能不全と診断された30代前半の女性
今回ご紹介するのは、30代前半の女性のお話です。
結婚から2年、なかなか授からず病院を受診されたところ、黄体ホルモン機能不全と診断され、治療が始まりました。
黄体ホルモンの役割とは?
黄体ホルモンとは、排卵後に卵胞が黄体に変化し、そこから分泌される大切なホルモンです。
このホルモンは、体温を上げたり、子宮内膜を着床しやすく整えたりと、妊娠の維持に欠かせない働きをします。
良い卵が育たない、排卵がうまくいかないなどの状態では、黄体がうまく形成されず、ホルモンが十分に分泌されません。
その結果、着床障害や流産の原因にもなってしまうのです。
不調の重なりとご相談時の様子
1年近く治療を続ける中で、月経周期が乱れ、排卵のオリモノも減少。
「このままで大丈夫だろうか…」と不安を感じられ、ご相談にいらっしゃいました。
お話をうかがうと、常に不安感があり、睡眠も浅く、時折胃痛もあるとのこと。
慢性鼻炎で呼吸も浅く、とてもお辛そうなご様子でした。
基礎体温のグラフもギザギザで、リズムが不安定。
漢方の視点から見ると、これは肝の気の滞りが脾胃(消化)の働きを損ない、さらに心血が不足し精神が不安定になっている状態。
そこに鼻炎による呼吸の浅さが加わり、熟睡できない悪循環に陥っていました。
心と体を整える漢方のアプローチ
まずは、眠りと心の安定を整えるために「酸棗仁(さんそうにん)」を含む漢方薬を。
そして、鼻炎の改善のために「辛夷(しんい)」や「黄芩(おうごん)」などの生薬を取り入れました。
体の基本的な不調が落ち着いたところで、周期調節法による漢方服用を開始。
体温が安定し、月経周期も整い、排卵期のオリモノも感じられるように。
まるで、体が少しずつ自分のリズムを取り戻していくようでした。
1年後、届いた嬉しいご報告
ちょうど1年ほど経った頃。
「最近は体調もよく、基礎体温も安定してるのに、赤ちゃんができないんです」
と、少し不安そうなお話がありました。
そろそろ次のステップも検討しようか…そんな会話をしていた矢先、
「月経が来ない。赤ちゃんができたかも」というご報告をいただきました。
まもなく妊娠が確認され、その後も悪阻も軽く、妊娠中も漢方を続けながら無事ご出産されました。
妊娠に向けて体を整えることの意味
妊娠は、タイミングだけでなく、「受け止める体」が整っていることもとても大切です。
今回のように、黄体ホルモン機能不全の背景にある体質の乱れやストレス、不調を丁寧に整えることで、妊娠への道が自然に開けていくこともあるのです。
1年以上かかることもありますが、その時間は決して無駄ではありません。
妊娠までの道のりは人それぞれです。
でも、体を整えるということは、どんなステージの方にも共通して大切なことだと感じています。
今、同じように不安を感じている方がいらっしゃいましたら、焦らず、自分のリズムを取り戻すことから始めてみてください。
「整えた体は、きっとその時を迎える準備ができている」
そんな信念を大切に、これからも丁寧に向き合っていきたいと思っています。





