滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2024年12月分をご紹介いたします。
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今月は、第276回『子宝の悩みと周期調節法~慢性子宮内膜炎と不妊症~』です。
-以下、記事本文-
慢性炎症が、不妊や流産の原因となり得る疾患として近年注目されています。
特に慢性子宮内膜炎で悩む例が多く、炎症性サイトカインの増加により子宮内膜が酸化ストレスを受け、受精卵の着床率低下につながると考えられています。
慢性子宮内膜炎の原因には、細菌感染、子宮内膜症、免疫異常、子宮筋腫、子宮内ポリープなどが挙げられますが、明確な原因は特定されていません。
抗生物質治療が行われますが、子宮内フローラ(細菌叢)への影響など課題も指摘されています。
東洋医学では、慢性子宮内膜炎の状態を「熱毒」があると捉え、免疫バランスが崩れている状態とみなします。
そのため、「清熱解毒」と「扶正袪邪」の働きのある漢方薬を用いて体内のバランスを整えるように考えます。
Mさんは、結婚後3回流産を経験し、 顕微授精による胚移植を3回試みるも妊娠に至らず、9年が経過しました。
基礎体温の乱れ、月経痛、頭痛、イライラなどの症状から、気血の流れが滞っていると考えられました。
そこで体質改善を目的とした漢方薬を中心に、周期調節法に基づいた漢方薬の服用により、自覚症状が改善し、体調が安定したところで再度顕微授精に挑戦。
良好な胚盤細胞を得ることができました。
しかし、移植前検査で慢性子宮内膜炎と診断され抗生物質治療を行いましたが、炎症マーカーであるCD138の数値が改善せず、清熱解毒と扶正袪邪の漢方薬を継続、結果、子宮内環境が整い、無事妊娠に至りました。
慢性子宮内膜炎を早期発見し適切に対応することは、不妊・不育症で悩む女性の一助になるかもしれません。