先週の3月28日、社員研修の一環で長浜市の認知症サポーター養成講座を受講しました。
介護士さんやケアマネージャーさんなど、実際に認知症を持つ方と日ごろから接していらっしゃる方々がお越しくださり、約90分の講義と質疑応答です。
お話の内容がとても良く、全員真剣に集中して講義を聞き、質疑応答も時間ギリギリまで盛り上がりました。

認知症サポーター養成講座の模様

特にこころに残ったのが、
「一見おかしな行動をしても、それは記憶を一生懸命にたどって何とか自分で対処しようとして現れた行動、決して困らせようとしたわけではない、そんな本人の思いに気づくことが大切」
と教えていただいたのにはハッとさせられました。

超高齢社会(65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている社会)を迎えるわが国では、認知症はこれから避けては通れない問題です。
ここ木之本町では65歳以上の方が39.7%、お隣の余呉町(ここから通勤しているスタッフが多いです)では45.7%と、日本の中でも高齢化が進んでいる地域なので、これをきっかけにきちんと向き合っていきたいと思いました。

そして、今回の認知症サポーター養成講座を受けるきっかけにもなったのですが、去年から「中医認知症予防ケア講座」を受講しています。
認知症に漢方薬、中医学の知恵を使って対応し、予防と進行抑制をするのが目標です。
中国では、認知症やその周辺症状に対しても中医学を用いて対応し効果を上げているそうです。

認知症の中医学的な対応原則は、補腎(生命力をつかさどる腎を補う)、活血(血の巡りを良くする)、健脾化痰(胃腸を元気にし、老廃物の排出を促す)の三本柱のもと、合わせて養生を行います。

補腎(ほじん)とは”腎”を補うことです。
“腎”とは現代医学の腎臓と似ていますが、それよりも少し広い概念で、水分代謝だけでなく、成長や生殖、老化もつかさどると考えます。
現代医学でも、腎臓で産生されるクロトー遺伝子は老化を抑制することがわかってきており、「腎は老化をつかさどる」という中医学の知恵は決しておかしなことではありません。

腎は老化をつかさどるので、認知症など老化が関係する症状に対する対策を考えた時に一番大切なのが補腎です。
ひとくちに補腎薬といっても、体を温めるもの、潤すもの、尿の出を良くするもの、睡眠の状態を安定させるもの、栄養が豊富なものなどいろいろありますので、体質に合わせて飲むのがおすすめです。

次に大切な柱が活血(かっけつ)です。活血は血の巡りを良くすることで、中医学では、脳血管性認知症などの脳の血管が障害されることによる認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症にも、レビー小体型認知症にも脳の血流が大きく関与すると考えます。
実際、最新の研究では、アルツハイマー型認知症でも、レビー小体型認知症でも、毛細血管が正常な脳と比べ細く短くなっていたり、血管が脱落していたりして、血流が障害されていることがわかっています。

活血薬にも、いろいろな種類がありますが、毛細血管などの微小循環を改善できる力があるものがよく、補腎と合わせてセットで対策するのがおすすめです。

三番目に大切なのが健脾化痰(けんぴかたん)です。
これは、胃腸を元気にして老廃物の排出を促すことを指します。
中医学では、アミロイドβやタウタンパク質などの老廃物を総称して”痰”と呼び、これの蓄積を防いだり、排出を促したりすることを化痰といいます。
健脾化痰薬がおすすめな人は、高脂血症や脂質異常症、高尿酸血症、糖尿病などの生活習慣病や肝機能異常がある方、ご両親が認知症だったなど遺伝要因がある方です。
この場合は、補腎、活血に加え健脾化痰を行い、三本柱で対策を立てるのがおすすめです。

健脾化痰薬にも、胃腸を元気にする力が強いものや、老廃物の排出を促す力が強いものなどいろいろあるので、こちらも体質に合わせて飲むのが大切です。

養生としては、まず生活習慣病がある方は、それを悪化させないこと、もっというと改善を目指すことがとても大切です。
生活習慣病は認知症の発症リスクを優位に上げることがわかっているので、適度な運動とバランスの食事で改善を目指しましょう
また、セロトニンが不足すると脳の機能が低下することがわかってきており、セロトニンの分泌を保つ養生も有効です。
具体的には、日光を浴びながら運動したり、朝一杯の味噌汁を飲んだりする方法が挙げられます。
脳を刺激するために、趣味や社会活動を楽しむのもおすすめです。
お家や一人が好きな方も、たまには外出したり、誰かと過ごしたりする時間を持って頂けると良いと思います。

以前から、認知症の周辺症状に抑肝散などの漢方薬が著効することは有名で、病院でもよく使われているようですが、漢方薬で認知症自体を治せるかというと、今はまだ難しいのが現状です。
しかし、お隣の中国ではかなり研究が進んでおり、論文もたくさん出されています。
いつの日か克服できる日も来るのかもしれません。

まずは今できることをということで、私も、健康維持のために、補腎薬として参馬補腎丸、活血薬として冠元顆粒を合わせて飲んでいます。
そして、季節のよい時期は、家族と一緒に近場の山にハイキングに行きます。
ハイキングは、認知症サポーター養成講座でもおすすめされていました。
20年後、30年後の元気のため、人生100年時代を元気に生き切るために続けていきたいと思います。