今冬、木之本は本当に雪が少ないです
例年なら一番雪が多くなる時期ですが、全くありません。
木之本名物、平和堂駐車場のどけ雪もあるのはありますが
ほんの少しだけ、ほぼないようなものです
雪が積もらないのは普段の生活には楽でいいのですが
このまま降らないのはなんか不安ではあります…
今回は脈が乱れて動悸がするという80台の男性の紹介です
最初はめまいのような症状があり、頭がすっきりしないとのご相談で漢方薬をお飲みでした。
4か月程度でご症状は良くなり漢方薬はやめられていたのですが、3か月後にまたご来店です。
今回は脈が乱れる、動悸がするとご相談です。
このかたは元々不整脈があり、西洋薬をもらって飲んだが副作用で飲めないとのこと。
当店で最初に漢方薬を飲んでいた頃は不整脈が治まっていたので漢方で飲みたいと。
年齢や体質を考え、虚証の気の上衝に対する薬方を選びました。
ひと月程は脈がまだよく飛んでいたのですが、その後2か月程で脈が乱れる日が1週間に2日ほどになりました。
脈が乱れることはあるが、体調も良く畑仕事もしているとの事。
それから瘀血を改善する薬方もお飲み頂き、脈もほとんど乱れることがなくなりました。
~~ちょこっと漢方薬のお話~~
脈の乱れ、動悸に使う漢方薬に炙甘草湯があります
薬味は
炙甘草、桂皮、麻子仁、大棗、人参、生姜、地黄、麦門冬、阿膠
方意は
桂枝+甘草:気の上衝からくる心悸亢進、息切れ、胸内苦悶
燥証:麦門冬、地黄、麻子仁、人参、阿膠
虚証:麦門冬、人参、阿膠、大棗
心の虚証、津液の不足から起こる気の上衝に対して滋潤作用、滋養作用の薬味が配されている薬方です
別名復脈湯と云います
応用は不整脈、期外収縮、狭心症、心臓神経症、心臓性喘息、甲状腺機能亢進症、血痰、肺炎、糖尿病…
出典は
傷寒論 太陽病下編 (康平本)
傷寒解而後脈結代心動悸炙甘草湯主之(傷寒の熱が下がった後、脈が結滞し動悸のする者は炙甘草湯の主治である)
*宋本等には「解而後」がない
金匱要略
血痹虚労病
千金翼炙甘草湯一云復脈湯治虚労不足汗出而悶脈結悸行動如常不出百日危急者十一日死
(千金翼方の炙甘草湯~一に復脈湯と云う~は疲労で血気が不足し汗が出て胸苦しくなり、脈が結で動悸がするのを治す。行動は常と同じようであるが、百日とはもたない、危急なる者は十一日にて死ぬ)(⇒炙甘草湯は証候を治し緩なる者も急なる者も救う)
肺痿肺廱咳嗽上気病
外台炙甘草湯治肺痿涎唾多心中温温液液者
(外台の炙甘草湯は肺痿の病で涎唾が多く胸ががポカポカとし、ムカムカして気持ちが悪いものを治す)
浅田宗伯は勿誤薬室方函口訣で
此の方は心動悸を目的とす。凡そ心臓の血不足するときは、気管動揺して悸をなし、而して心臓の血動、血脈へ達すること能わず、時として間歇す。故に脈結代するなり。
此の方能く心臓の血を滋養して脈路を潤流す。是を以て動悸を治するのみならず、人迎辺の血脈凝滞して気急促拍する者に効あり。是、余数年の経験なり。…
と述べています。
炙甘草は甘草を修治し炙ったもの、あるいは蜂蜜につけ炒ったものです
甘草は漢方処方の7割ぐらいには含まれていて、なくてはならない薬味です
別名国老といい
甘平、脾胃の不足を補う、十二経を通行し、急を緩める、諸薬を協和させ、芍薬の毒を解す(訂補薬性提要)
生の甘草は解毒の力が長け、炙甘草は補気作用に長けます。
また薬性は基本平なのですが、生甘草は少し冷で、炙甘草は少し温と云われます、
甘草と炙甘草については昔から色々な説や論があります。
甘草も質が大事で、補剤なので太くて皮が薄く甘いものが良品です
甘草についてはこちらも…
阿膠はロバの皮を煮詰めて作った膠(ニカワ)です
山東省産の山東阿膠が一番の良品で、その中でも褐色の飴色で透明度があるものが最良品です。
阿膠は煮詰めてカチカチにします。
中国では一般に四角形の板状の塊にしたものが販売されているのですが
そのためか中国の生薬市場ではあまり量り売りされておらず、以前に市場で阿膠がないか探し回った時
ある店のおばちゃんが私の飲んでるのならあるよって引出から出して製品を見せてくれました。
この阿膠の価格が中国で近年異常に高騰し、上質のものが手軽には手に入れにくくなりました。
コロナ前ですが中国に行ったとき、百貨店で販売されていた阿膠の価格を見て本当に驚きました。
20年ぐらい前のこと、中国の青平生薬市場の近くの路地の屋台で山東阿膠が売っていたので、何気なく買ったのですが、その時からすると、現在の流通価格は数十倍上がっています…
(自生の甘草~ゴビ砂漠で~)