さすがに木之本の町も降りました…
でもまだ全然少ないです
寒波寒波という割には降るのが遅かったように思うのですが…
今回は咳、痰が長引いて、夜も眠れずお困りの60歳代の女性のご紹介です
2か月前から咳がでて、痰も絡むようになり段々とひどくなりました。
咳止めを処方してもらい飲んでいましたがあまり回復しません。
夜もせき込んで眠れなくなる事もあります。
急に咳が出てきてえずくまで咳込みます。
以前にも季節の変わり目は咳が出る事もあったが、ひと月もしないうちに治まったとの事でした。
この方には痰がひどく絡み、口も乾くとのことで滋潤作用と清熱作用のある薬方と少陽病位で気虚を補う薬方をお飲み頂きました。
服用後5日ぐらいから咳が止まってきて、夜も寝られるようになり
ひと月半ほどで咳はすっかり治まりました。
~~ちょこっと漢方薬のお話~~
咳、痰に使う漢方薬に竹葉石膏湯があります
竹葉石膏湯は出典が傷寒論で薬味は
麦門冬、粳米、半夏、甘草、人参、竹葉、石膏
これは麦門冬湯(麦門冬、粳米、半夏、大棗、甘草、人参)に竹葉、石膏を加え大棗を去した薬方なのですが
麦門冬湯は出典が金匱要略なので、
麦門冬湯は竹葉石膏湯から竹葉、石膏を去して大棗を加えた薬方 という方が良いのかも…
まあどっちでもいいことのなのですが…
麦門冬湯の金匱要略 肺痿肺廱咳嗽上気篇の条文
大逆上気し咽喉不利す、逆を止め気を下す者、麦門冬湯之を主る
(咳がこみあげて顔を赤く上気し、咽の通りが悪い者には逆を止め気を下げる麦門冬湯が主治する)
竹葉石膏湯の傷寒論 弁陰陽易差後労復病併治第十四の条文は
傷寒解後、虚羸少気し、気逆吐せんと欲する者は竹葉石膏湯之を主る
(傷寒は治まったが、気力体力共に衰えて息苦しく呼吸が弱く、上気して吐きそうになる者は竹葉石膏湯が主治する)
麦門冬は滋潤、鎮咳、去痰、滋養作用があり
粳米(うるち米)も滋潤、滋養作用
人参も滋潤、滋養、強壮、健胃作用
と、滋潤作用のある三つの薬味が燥症と虚証を治します
このため麦門冬湯は咽が乾燥し激しい乾咳に用いる代表的な薬方で
痰も水分が少ないため粘調で切れにくいです
竹葉石膏湯はこの麦門冬に
清熱、解熱、鎮咳作用のある竹葉
清熱、解熱、鎮静、止渇作用の石膏を加え
麦門冬湯より気の上昇が強く、熱証が顕著で、燥性が強く口喝がある証となります
老人、乾燥肌の人、痰が切れない人などは適応する場合が多く
夜布団で温まるとひどくなる咳や妊娠咳にも用います
また進行した肺がんの咳もこの証を呈することが多いです
方中の人参は本来
急性期の熱症時は竹節人参、熱証がない時は白人参を使いたいものですが、竹節人参がもう手に入りません。
大塚敬節先生は麦門冬湯の条文の大逆上気の変形ととらえてくしゃみ、しゃっくりにも応用されました。
竹葉石膏湯は傷寒論の陰陽易差後労復病編の出典ですが
この陰陽易とは男女の接触により一方の病が相手に伝わる事を言います
差後労復病とは病の回復期に無理をしたために病が再悪化することを言います
麦門冬湯はコロナ禍の咳に多用され、製剤の品切れを起こし処方箋薬のメーカーは出荷停止になったのは記憶に新しいところです。
(傷寒論 弁陰陽易差後労復病併治第十四より)