一時期、今冬は雪どけをしなくてもいいか…
なんて思った時もありましたが
2月になってそこそこ頑張らされました
それが、暖かくなるとみるみる消えて行きます。
そろそろママさんダンプやスコップも仕舞わねば…
今回は足のむくみが気になると言う55歳の女性のご紹介です
長年お顔の湿疹や肩こりなどで色々とご相談を受けている方
両足のむくみが気になるとの事です
元々むくみっぽいのはずっとありましたが、最近特に気になるようになりました。
お仕事を終わって家に帰ると、靴下のゴムあとがくっきりとつき
ひどいと見るからに腫れているような感じで、足も重だるくなります
脛の部分を押すとぺっこりへこんで、なかなかもとにもどりません。
この方には水分代謝を調節する利水作用の漢方薬を選びました。
次のご予約来店時にはむくみもスッキリとなくなり、軽くなったと言われました
それから、むくみ体質ということで飲む回数を減らしてお続けです
~~ちょこっと漢方薬のお話~~
むくみや腎膀胱系の機能低下に使う漢方薬に五苓散があります
薬味は 澤瀉、猪苓、白朮、茯苓、桂皮
漢方薬の代表的な利水剤で、桂皮以外の4味とも利水作用の生薬です。
桂皮は気の上衝、表の虚、寒証を解します、又経絡を温通して利水を順調にさせます。
出典は傷寒論、金匱要略で条文は多くあります
主なものに
太陽病発汗後大汗出胃中乾煩燥不得眠欲得飲水者少少與飲之令胃氣和則治愈若脈浮小便不利微熱消渇者與五苓散主之
/傷寒論 辨太陽病脈證并治中第六
(太陽病を発汗させたところ、大汗が出たので胃の中が乾き(=口喝が激しい)煩躁し、眠れなくなった。
水を飲みたがる者には少し水を与えると胃氣が和して良くなる。この時、脈が浮で小便不利、微熱し、喉が渇くものは五苓散の主治である。)
霍乱頭痛発熱身疼痛熱多欲飲水者五苓散主之寒多不用水者理中丸主之/傷寒論 辨霍乱病脈證并治第十三
(霍乱病で頭痛発熱し体が痛み、熱が多く水を飲みたがる者は五苓散が主治する、寒気が多く水を飲みたがらないものは理中丸=人参湯の丸剤が主治する) *霍乱病:嘔吐下痢を主とする病
假令痩人臍下有悸吐涎沫而癲眩此水也五苓散主之/金匱要略 痰飲欬嗽病
(例えば痩せた人で臍の下に動悸があり、涎沫を吐き頭痛目眩する者は水毒である、五苓散の主治である
方意は傷寒・金匱の条文の通り 五苓散は口喝と尿不利が基本です
五苓散の吐は水を飲んだらすぐ吐くという水逆で
飲んで半日ほどして吐くのは胃反といい茯苓澤瀉湯(金匱要略)などの証です
茯苓澤瀉湯:茯苓、澤瀉、白朮、桂皮、甘草、生姜 (=五苓散去猪苓加生姜甘草)(=苓桂朮甘湯加澤瀉生姜)
応用は
下痢、嘔吐、腎炎、膀胱炎、頭痛、目眩、メニエール、浮腫、動悸、ヘルペス、ストロフルス、夜尿症…
など、水分偏在が原因の多くの症状や疾患に応用できます
夏の日射病や熱中症、脱水症にも五苓散は有効です
発汗により血液中の水分が減少し、口喝が生じます。この時に冷水だけを飲むと胃腸が冷え、胃から水分の吸収が行われず、
消化管内に水分が貯留してしまい、その水が水逆となり吐いたり、下痢したりします。
五苓散はこの消化管内に滞留した水分偏在を改善する働きです
加味合方も多くあります
五苓散去桂枝(猪苓、白朮、茯苓、澤瀉)=四苓湯:腎炎、つわり
合黄連解毒湯:腎炎、膀胱炎 *二日酔い用の製品もあります
合猪苓湯:腎炎、膀胱炎 *五苓散は利水、猪苓湯(猪苓、茯苓、澤瀉、滑石、阿膠)は利尿
合小柴胡湯=柴苓湯:免疫疾患
合人参湯:肝硬変(B型による腹水)
合平胃散=胃苓湯
加川芎、白芷:頭痛、メニエール、上焦のヘルペス
加車前子:仮性近視
など
原典の傷寒論では五苓散は生薬を粉末にし、重湯に混ぜて服用するように指示されています。
煎剤ニテハ一等下ルナリ、胃苓湯ヤ柴苓湯ヲ用ユルハコノ例ニ非ズ(勿誤薬室方函口訣/浅田宗伯)
利水の生薬は温剤が多いのですが、五苓散の澤瀉は数少ない寒性の利水剤です
五苓散の薬味の
猪苓はチョレイマイタケの菌核、茯苓はマツホドの菌核、白朮はオケラの根茎 で山の土中の生薬ですが、
澤瀉は沼地や水田、河川の浅瀬に生育するサジオモダカの根茎です。
水は寒なりと言いますが、この水辺の生薬というのが寒性と関係があるのでしょうか
30年以上も前になりますが、大学薬学部時代の同窓生の結婚披露宴に出た時の事。
来賓の挨拶で当時の薬理学教授が
実験で、糸球体腎炎のラットに五苓散を投与すると、なんでかわからないが改善する…
漢方薬というのは不思議だ…
なんて話をされたのを思い出します。
当時この教授から漢方薬の話が出るとは思ってもみなかったので、とても驚きました。
加味方にも書きました四苓湯ですが
薬味は五苓散去桂枝(猪苓、白朮、茯苓、澤瀉)という利水剤4味の薬方
出典は温疫論(明代1500~1600年頃)と言われますが、白朮は陳皮になっています
薬味構成からすると五苓散証で表証のない、口喝して水を飲み、飲めばすぐ吐いてしまい、小便不利する者となります
また、五苓散の桂皮の精油が粘膜に刺激性があるため、腎臓関連症状にも桂皮が要らない場合が多くあり、四苓湯も出番多い薬方です
(黙堂柴田良治処方集 より)