今年の冬は例年になく雪が少ない…と1月末に書いていたのですが
そんなに事はうまく運びませんでした
県境の中河内では3mとか4mとか…
でも木之本はずいぶんマシで例年通りぐらいの積雪です
道路も除雪、融雪のおかげでそれほど不自由はありません。
週明けは暖かくなるようですので期待します

今回はしんどくやる気が起こらないと言う10台の女性のご紹介です

体が疲れやすくてしんどく、気が晴れず何もやる気が起こらない若い女性です
2年ぐらい前からとのことで、朝が起きにくい起立性調節障害の傾向もあります
色白でやせ型、手足の冷えもきつく、めまい、頭痛、肩こりもあります
この方の症状は内臓の冷えと自律神経系の乱れが大きく関わっていると思われ
鬱滞した気の流れを改善する薬方と、脾虚を改善し裏を温める薬方を選びました
一か月程はあまり変化がありませんでしたが、2カ月目ぐらいから徐々にしんどさが改善
徐々に頭痛やめまいも起こらなくなり、7か月を過ぎる頃にはしんどさなどほぼなくなりました。

~~ちょこっと漢方薬のお話~~

漢方薬に香蘇散があります

薬味は 香附子、蘇葉、陳皮、甘草、生姜

香附子、蘇葉、陳皮とも気滞を発散させる理気剤です
出典は太平慶民和剤局方で「四時ノ温疫、傷寒を治ス」
といわゆる流行性の感染症、疫病、感冒などの薬方として記載されています
原典には生姜が入っていないのですが、後世の書物には生姜と葱白(白ネギ)が加わります。
現在は一般に上記の5味からなり、葱の白い部分を加えて服用すると発汗発表作用が増します

方意は
・表の寒証(頭痛、発熱、悪寒等)桂枝湯類似
・気滞による精神症状(抑鬱、精神不安定)
・脾胃の虚証

応用は 感冒初期(胃腸虚弱)、魚毒(魚、蟹、海老、貝)による食中毒、神経症…
ほぼ理気剤だけの単純な薬方ですが、使い方次第では出番の多い薬方です

加味方は
+烏薬、乾姜:正気天香湯(此ノ方ハ気剤の総司ナリ/勿誤薬室方函口訣・浅田宗伯)
+川芎、白芷、細辛:頭痛に
+杏仁、桑白皮:咳嗽に
+柴胡剤:感冒後の耳管閉塞に(柴蘇飲:香蘇散合小柴胡湯)
他加味方は多くあります

胃腸虚弱者の感冒には
参蘇飲(蘇葉、人参、枳殻、木香、桔梗、陳皮、葛根、前胡、半夏、茯苓、大棗、生姜、甘草)もあり、気虚がある場合に使います。
香蘇散は出番の多い薬方と書きましたが、感冒には多くの薬方があるためどちらかというと感冒以外での出番が多いと思います。

香蘇散は蘇葉と香附子が重要な働きをします

蘇葉はこちらを

香附子はこちらを

香附子はカヤツリグサ科のハマスゲの根ですが、中国の植物名は莎草(しゃそう)といいます
このため書物によっては蘇葉、莎草、陳皮… と記載されているものもあります
香附子という名前ですが、附子とは全く異なる生薬で何の関連性もありません、もちろん働き、使い方も全然違います。
香りがあり、附子(トリカブトの子根)を小さくしたような形のために香附子というようになったそう…


(勿誤薬室方函口訣/浅田宗伯より)