滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2023年4月分をご紹介いたします。

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今月は、第256回『子宝の悩みと周期調節法㉝~慢性子宮内膜炎~』です。

-以下、記事本文-

慢性子宮内膜炎は、子宮内膜に対するアレルギーや、過去の流産、帝王切開、子宮内への器具の挿入、産後の環境などがきっかけとなる子宮内膜の炎症によって引き起こされる疾患であり、内膜の質が低下し、不妊症や、流産、早産の原因につながることがあります。

この病気には抗生物質などの治療が一般的ですが、完治せず治療が難航することもあり、その方の持つ自然治癒力などと関係するとも言われております。

32歳のYさんは、なかなか妊娠できず、不妊治療を徐々にステップアップ。
体外受精でグレードの良い卵を2回移植しても妊娠に至らず、着床障害の検査で、慢性子宮内膜炎の診断を受けました。
3クールの抗生物質による治療後、改善が見られなかったとのこと。

Yさんは、とても疲れやすく、よく風邪をひき、胃腸が弱いとのことです。舌が白く、体が冷え、気血が不足しているにもかかわらず、体温は高めでとても不安定。
免疫力が不足し、常に炎症を起こし微熱がある状況です。

衛気を養い、炎症を緩和する生薬を含む漢方薬を基本とし、脾腎を補い、気血の流れを良くする漢方薬を、周期調節法に応じた服用方法で服用しました。

3周期服用した後の再検査で、慢性子宮内膜炎が完治したとのこと。
その1か月後移植し、妊娠。
妊娠中は、衛気を養う漢方薬を続けながら、つわり、むくみ、下腹痛など妊娠中の症状を緩和する漢方薬を続け無事出産されました。

自然治癒力がある人と無い人では抗生物質の効果に差がありそうですが、うまく漢方薬を利用することによって、その差を無くすことができるかもしれないと思う例でした。

滋賀夕刊掲載【第256回】漢方薬のおはなし