滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2023年5月分をご紹介いたします。

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今月は、第257回『両手両足のしびれ…~精神不安も改善~』です。

-以下、記事本文-

遠方より来店の55歳のSさんは1年ほど前から手足のしびれで悩まれています。

両足の膝から足先までと、両腕のひじから先までほぼ一日中しびれがあります。
一日の間に何度もひどくなるような波があり、そのためにしんどくなり、不安感も強く、気分的にもとても落ち込んでいます。
手足ともしびれがあるので頸椎や腰椎、他の色んな検査をしても原因はわからないとのことでした。

Sさんは元々腰痛持ちだったのですが、以前にすべり症の手術をして腰痛が改善しました。
婦人科疾患の大病の手術もしており、今回は体に負担のかからない漢方薬を求められました。

漢方医学では、気血の流れが滞ることにより、組織が栄養されず、代謝が悪くなって痛みやしびれが起こると考えます。
このため西洋医学的な原因が特定できていなくても漢方薬を選ぶことが出来ます。

Sさんにもまずは瘀血を改善し血を補う薬方、水毒を改善し組織の代謝を良くする薬方を選薬しました。
またSさんは色んな既往症があり、今回のしびれの症状から気分の落込みや、今後の生活への心配がとても強く、五志(怒喜憂悲恐)の憂に対して肝気の滞りを改善し安神作用のある漢方薬も選びました。

服用後の経過は少しずつの改善ですが、一年以上漢方薬を続けられ、しびれはほぼ感じることがなくなり、気分的にも落ち着いて過ごせています。

つらい症状からの精神不安で余計に症状が治りにくくなることも多く、痛みやしびれに限らず漢方療法では五志の憂の改善はなくてはなりません。

滋賀夕刊掲載【第257回】漢方薬のおはなし