9月半ばも過ぎましたが、この暑さはいったいどうしたのでしょうね
先日、お客様が
「暑くて暑くて…
生きてるだけで死にそうです」 って…
もう訳分かりません…
来週は少し気温が下がるみたいですけど
日が昇ると秋が消えてしまうこの頃です
今回は繰返す湿疹でお悩みの82歳の男性のご紹介です
何年も前から、手、足、体幹にプツプツと湿疹ができて痒いと言われます。
ステロイド軟膏やかゆみ止めを内服されてきましたが、
治まってもまたぶり返し、しばらく軽くなってもまたひどくなることの繰返しとの事。
色んな治療法も試されましたが、効果が出ないとの事で漢方薬をお求めになりました。
皮膚を見ると少し赤く盛り上がった湿疹とプツプツと小さな湿疹が多数出来ていて見るからに痒そうです。
また皮膚全体は高齢の方特有の乾燥性の肌です。
漢方薬は血を補い乾燥を潤し痒みを止める薬方と血熱を冷まし血流を改善する生薬を選びました。
服用後ひと月半で、ステロイド軟膏を塗らなくてもよくなり、痒みが治まってきました。
それから少しプツプツ出る事もありましたが、5か月程になりますがほとんど痒みなく過ごせており、
乾肌のさらなる改善のために服用継続中です。
(右手 初回来店時)
(左手 初回来店時)
(5か月後 右手)
(5か月後 左手)
~~~ちょこっと漢方薬のお話~~~~
皮膚病に使う漢方薬に当帰飲子があります。
薬味は
当帰、熟地黄、川芎、芍薬、蒺藜子、防風、何首烏、荊芥、黄耆、甘草
四物湯(当帰、地黄、川芎、芍薬)がベースで
荊芥、防風:皮膚発表、皮膚新生
何首烏:肝腎の補陰、補血
黄耆:補気、肉芽形成
蒺藜子:袪風⇒鎮静、止痒作用
方意は 血虚による表の血燥
乾燥性の皮膚病で血虚が原因するものです
血虚があり表に栄養を補えず皮脂が少ないと、特に冬場は湿度の低下や発汗の低下で悪化します。また温まると乾燥を助長し皮膚病が悪化します。
応用は老人性皮膚搔痒症、湿疹、蕁麻疹、乾癬、年配者の日光皮膚炎…などに使います
出典は済生方
心血凝滞し、内に風熱を蘊し、発して皮膚に見われ、遍身瘡疥あるを治す
浅田宗伯は勿語薬室方函口訣で
此ノ方ハ老人血燥ヨリシテ瘡疥ヲ生ズル者に用ユ。
若シ血熱アレバ温清飲ニ宜しシ。又此ノ方ヲ服シテ効ナキモノ四物湯ニ荊芥、浮萍ヲ加ヘ長服セシメテ効アリ。
と述べています。
*浮萍(フヘイ、フヒョウ):浮草
血熱があれば温清飲と述べられていますが
温清飲も当帰飲子も四物湯がベースで血虚があります
温清飲は四物湯に血熱に対する黄連解毒湯が合方されたもの
こちらの当帰飲子は清熱の作用があまりありません。
老人や虚弱な方に適応することが多いのですが、若年層でも皮脂が少なく血熱のない場合は充分使います。
基本的には乾燥性の皮膚で浸出液が出ていない場合に使うことが多いのですが、大塚敬節先生は血虚の状態の湿疹について
発疹が小さいこと、永く治らないこと、発疹の先が鋭からず扁平であること、
浸出液がじとじとと出て乾かない、乾くかと思うとまたじとじとと出て痒みが強い。
老人や体の弱い人に見られることが多い…(大塚敬節/漢方診療三十年より)
と述べられています。
当帰飲子の薬味の中で重要な働きをしているのが蒺藜子(シツリシ)です。
頻用される薬方の中では当帰飲子ぐらいしか使われていない生薬ですが、当帰、防風、何首烏などと用いると止痒効果が高くなります。
(蒺藜子)
ハマビシ科ハマビシの果実を乾燥したもので、1㎝に満たない小さな果実に1~2本のトゲがあります。
和名のハマビシ(浜菱)という名はヒシ(菱)の実に似ているため、海浜の菱という意味で名づけられました。
ハマビシ属はラテン名Tribulus(トリブルス)といいますが、トリブルスはラテン語のまきびしという意味です。
忍者が追手から逃げるときにばらまくアレです
昨年の秋、水位の低下で琵琶湖のモンサンミッシェルと話題になった奥の洲に行ったとき、浜辺には大量の菱の実が流れ着いていました…