6月6日に雨ザーザー~ と今年はいかないようです
梅雨入りが例年より遅いという予報
24節気では芒種(ぼうしゅ)といい、稲、麦などのイネ科の種をまく時期で夏至までの期間です。
昔はこのころに田植えをしていたようですね

今回は腰痛のご紹介です

55歳 男性
数年前から足腰の調子が悪い方。
腰が痛だるく、太ももは引きつるように痛み、夜中は頻繁に足がつるとのこと。
痛くなったり治まったりで放っておいたところ、痛みが引かなくなってしまい来店されました。
以前に家の階段で転んだことも何回かあるとのこと。
腰椎関節の変形が神経の流れを阻害し、痛みが起こっているようです。
関節部の炎症や弱りも見受けられ、漢方薬は2処方をお飲みいただきました。
痛みは2週間程で軽くなり、3ヶ月目にはほぼなくなりましたが、その後も予防の漢方薬をお続け頂いています。
(ボテジャコ掲載)

~ちょこっと七めんどくさい漢方薬のお話「痛みの漢方薬」~

腰痛など関節の痛みに使う漢方処方の中に越婢加朮湯があります。

金匱要略 水気病の越婢湯に朮を加えた処方です
越婢湯の薬味は 麻黄、石膏、生姜、大棗、甘草
これに朮(蒼朮あるいは白朮)を加え越婢加朮湯で、同じく金匱要略 中風歴節病が出典です

傷寒論の流れで云うと、越婢湯は大青竜湯から桂枝、杏仁を去した処方です
大青竜湯:麻黄、石膏、桂枝、杏仁、生姜、大棗、甘草
越婢湯 :麻黄、石膏       生姜、大棗、甘草
麻黄湯 :麻黄    桂枝、杏仁       甘草
大青竜湯の麻黄+桂枝+石膏は無汗に使い大発汗作用がありますが
越婢湯の麻黄+石膏になると自汗に使い止汗作用になります
また石膏の証は口喝があるのですが、越婢湯証はひどい口喝ではないです
越婢加朮湯は朮を加えることで麻黄+朮で利水の作用が強くなり
腰痛、関節痛、下肢神経痛、リウマチなどの陽証の水毒の痛みに使います
また、腎炎の初期、結膜炎、湿疹などにも応用できます。

茯苓を加えると越婢加苓朮湯
陰証には附子を加え越婢加苓朮附湯とします
骨粗鬆症など、骨の代謝には防己黄耆湯を合方します
桂枝湯と2:1の割合で合方し桂枝二越婢一湯(加苓朮附湯)となり
越婢加朮湯 → 桂枝二越婢一湯加朮湯 → 桂枝加朮湯
と実証から虚証へと広がります
(詳しく診ると桂枝一越婢二湯も桂枝越婢湯もありますが…)

越婢加朮湯:麻黄、石膏、蒼朮、生姜、大棗、甘草
桂枝加朮湯:桂枝、芍薬、蒼朮、生姜、大棗、甘草
防已黄耆湯:防已、黄耆、蒼朮、生姜、大棗、甘草
この3処方を使い、組合せることで水毒の関節の痛みに幅広く対処できます。
さらに茯苓、附子の加味により陰証への使用もでき、
というか、実際は陰証の方が多いとは思います

越婢加朮湯の越婢(えっぴ)の由来については色々あります
1、越の国(呉越同舟の越ですね)の婢(下女)から伝わった処方
2、越の国の婢(下女)のための処方
3、越の字は発越=発散の意味があり、婢は痺、痹の間違いで痛み、しびれを発散させる処方
4、婢は脾の間違いで、脾気を発越して津液を通行させる処方
など…

ところで先に書いた通り、越婢加朮湯は金匱要略が出典なのですが
条文には千金方越婢加朮湯、治肉極熱則身體津脱腠理開汗大泄厲風氣下焦脚弱 とあります
(千金方越婢加朮湯は肉極、熱すれば則ち~~~~下焦脚弱するを治す)
千金(要)方は孫思邈(AD581~682)の著で
千金方とは
「人命は大切なものであり、千金の貴さがある
一つの処方でこれを救うというのは徳がこれを超えるものであるためである」
ということから名づけられたそうです


(微急千金要方より)