滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2021年6月分をご紹介いたします。
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今月は、第234回『子宝の悩みと周期調節法㉘~子宮内膜症と妊活~』です。
-以下、記事本文-
「子宮内膜症なので、結婚前はピルで治療していました。」
33才のRさんは妊活を始めてもなかなか妊娠できないため来店されました。3センチほどの卵巣チョコレート嚢胞があるようです。
子宮内膜症は、子宮の内膜が卵巣内、もしくは腹腔内のあらゆる場所に発生し増殖する疾患で、骨盤内の異常、免疫異常、内分泌異常、排卵障害、着床障害、卵の質の低下、卵管閉塞などにより妊娠力が損なわれることが知られています。
ピルの内服が一般的な治療方法ですが、最近ではピルの長期服用によりAMH(卵巣予備能)が20%ほど低下するという論文が報告され、今後の研究が気になるところです。
東洋医学では子宮内膜症の原因は、冷えやストレスなどによって気血の流れが悪くなること、脾の気の力、腎の免疫調節の力などが弱いことなどと考え漢方薬の選定を行います。
Rさんの体温はギザギザ不安定で、下痢と便秘を繰り返し、手足は冷えやすく月経痛が酷いとのことでした。
脾、腎を温め、補う生薬とともに、気血の流れを良くし、消腫効果のある生薬と併用して、体調を整えることにしました。
月毎に月経痛は軽くなり、体温が安定し、1年を過ぎようとしたころ妊娠、卵巣内のチョコレート嚢胞は気にならないほどの大きさとの事でした。
一度発症したら治らないと言われる子宮内膜症。人の持っている自然治癒力は不思議な力を発揮することもあるのだと思うきっかけになった出来事でした。