滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2023年8月分をご紹介いたします。
バックナンバーはこちら(お悩みの症状に関連する記事を検索していただけます。)
今月は、第260回『子宝の悩みと周期調節法㉝子宮内膜症と不妊』です。
-以下、記事本文-
少子化、晩産化に加えて、初潮が早まる傾向にある昨今、子宮内膜症を発症する女性が増加していると言われています。
子宮内膜症は子宮内膜の組織が子宮外に増殖する病状であり、「子宮内膜症性不妊」として、不妊症の原因の一つに上げられています。
月経周期に伴い癒着と出血を繰り返し、慢性的な炎症状況に置かれることにより、卵の質や、子宮内の着床環境の悪化などが不妊の原因に考えられていますが、効果的な治療方法が無く、なるべく早い妊娠計画が一番の解決策とされています。
以前中国の不妊研修で、子宮内膜症性不妊の講義を拝聴した際、子宮内膜症の状態は、長期的な瘀血(血流が悪い)、痰濁(老廃物)の蓄積、長期的な気の不足、性腺軸の働きの低下(生殖の正常な働きが失われ、ホルモンバランスが乱れること)があることと学びました。
瘀血、痰濁があれば炎症につながり、気が不足すれば炎症を改善する力が失われます。
その結果卵の質が低下し性腺軸の働きが損なわれる原因になり、月経期、低温期がギザギザ不安定で、高温期が低く短く不安定な状況が見られます。
それぞれ、水蛭(すいてつ)三稜(さんりょう)莪朮(がじゅつ)田七人参などの血流を改善する生薬、チャガ、半枝蓮(はんしれん)敗醤草(はいしょうそう)などの痰濁を改善し炎症を抑える生薬、人参、黄耆などの気を補い自然治癒力を高める生薬などを含む漢方薬を使いながら、腎を補う生薬で、性腺軸の働きを助け、正常な基礎体温の形に近づけることが大切です。
痛み、熱などは、異常を知らせる大切なシグナルです。
その原因としっかり向き合い、きちんと対処することこそ夢をかなえる一歩です。