気温の変化が大きいですね
先日は暖房を入れました
さすがに6月で暖房を入れたことは今までなかったような気がします
本当に天候不順が激しく、不順不順とずっと言っているような感じですね
不順なのが普通になったら、天気予報では
“例年並みの天候不順です”っていう事になるのでしょうか??
さて今回はコロナ感染の後、倦怠感が抜けず、頭がすっきりしないという50歳代の女性の紹介です
コロナに感染し、コロナの症状自体は早く治まり、10日後からは仕事に復帰されました
しかし、体が重だるく倦怠感が抜けません、頭もスッキリしない感じが続き、
日中の眠気も強く、仕事も休みがちになっています。
しんどくなると動悸もしてきます。
ご自分で漢方薬も飲まれましたがあまりよくならないとの事で相談です
この方には心脾の両虚を補い、少し残っている少陽の熱を清熱する漢方薬をお飲み頂きました。
少し時間がかかりましたが、一か月後には眠気や動悸がだいぶんおさまりました
その後半月の服用で漢方薬を終わることが出来ました。
~~ちょこっと漢方薬のお話~~
だるさや疲れ、動悸などに使う漢方薬に帰脾湯があります
しばらく傷寒、金匱の処方が続きましたが、こちらは宋代の厳用和の著、済生方が出典です(1200年頃)
薬味は
人参、白朮、茯苓、当帰、黄耆、酸棗仁、遠志、木香、竜眼肉、生姜、大棗、甘草
方意は
四君子湯(人参、白朮、茯苓、甘草、生姜、大棗)をベースに
鎮静作用、強壮作用の酸棗仁、竜眼肉、遠志
気を行らせる木香
補血作用の当帰
人参とともに補薬の長である黄耆
から成り、脾虚で心虚、血虚の神経症等に用います
応用は
神経症、不眠、健忘、出血(腸出血、子宮出血、血尿、痔出血、潰瘍…)白血病、悪性貧血、再生不良性貧血、バンチ氏病、紫斑病などの諸病
自律神経症状、動悸、だるさ、疲れ、食欲不振などの諸症状に使います
加味方に柴胡、山梔子を加えた加味帰脾湯がありこちらの方がなじみがあるかもしれません
応用は帰脾湯に同じなのですが、柴胡、山梔子により帰脾湯に、のぼせ、手足のほてり、イライラ、胸苦しさ、口乾、口唇乾燥などの虚熱症状が加わった場合に用います
現在の加味帰脾湯はこの柴胡、山梔子を加味したものが一般的なのですが
柴胡、山梔子、牡丹皮を加味したもの
山梔子、牡丹皮を加味したもの
もあります
帰脾湯に熟地黄を加味すると黒帰脾湯になり、血虚が強い場合に用います
また帰脾湯は近年、認知症に使う場合が多くあります
元々の原典の済生方には
思慮制ヲ過ギ心脾ヲ労傷シ健忘柾仲スヲ治ス
(思慮過度のああまり心脾を傷つけ健忘や胸騒ぎを起こすものを治す)
原典の済生方にでは当帰、遠志は入っていないのですが、明代に劉純が当帰を、薛己が遠志を加え、不眠、貧血、健忘への効果も増しました。
当店でも認知症の幻視幻聴にもかなり良い効果が出ている例があります。
三国志にはこの当帰と遠志にまつわる逸話があります、リンクをどうぞ
薬味の竜眼肉ですが
ムクロジ科リュウガンの果肉を乾燥させたものです
果実を切るとちょうど竜の眼のようなのでリュウガンと名付けられました
いわゆるドライフルーツ状のものなのでそのままおやつとしても食べてもよく、香りにちょっとだけくせがありますが、甘くておいしいです。
漢方処方に使われているのは帰脾湯、加味帰脾湯しか私は知りませんが、中国では薬膳でよく使われているようですね
同じムクロジ科のライチと似ています
竜眼肉:甘温 心を補う 脾を益す (訂補薬性提要より)
竜眼と竜眼肉
ところで帰脾湯は四君子湯がベースで陰証が基本です
炎症性、充血性のものには使ってはいけません
(黙堂柴田良治処方集より)