滋賀夕刊に掲載中の【漢方薬のおはなし】2025年6月分をご紹介いたします。

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今月は、第282回『更年期の悩み…~動悸、ホットフラッシュ、不眠~』です。

-以下、記事本文-

女性が50歳前後になると迎える「更年期」。
体だけでなく心にもさまざまな変化が起こり、「老化」という言葉に敏感になる人も少なくありません。
物忘れや集中力の低下、意欲の減退、不安や不眠に悩むなど、「自分はこんなに弱かったのか」と感じることもあります。
代表的なホットフラッシュ(発汗やのぼせ)だけでなく、手足の冷えや体調不良を訴える人も増えています。
背景には女性ホルモンの急激な減少による自律神経の乱れがあります。

漢方では、女性ホルモンの働きを「腎陰・腎精」の不足ととらえ、体と心のバランスの崩れが不調の原因と考えます。
2000年以上の歴史を持つこの考え方は、西洋医学との共通点も多く、漢方薬の効果が科学的に説明されつつあります。

Tさん(50代)は、更年期に子どもの就職活動や親の介護、仕事の悩みが重なり、動悸や不眠、のぼせ、意欲の低下に苦しみました。夜は眠れず、日中も仕事のミスが増え、生活に支障をきたしました。
漢方では「腎の水」が不足し、「肝の気」の流れが滞ると「熱」が生まれ、心の興奮(火)が冷めず、不眠や動悸が起きると考えます。

Tさんには、心の熱を鎮め、腎の水を補い、血の流れを整える漢方薬を提案しました。
まずは睡眠の改善に取り組んだ結果、次第に眠れるようになり、不安も軽減。動悸も少しずつ減り、ホットフラッシュも和らぎ、季節の変化とともに症状も落ち着いていきました。

更年期の治療ではホルモン療法もありますが、漢方薬による体質改善も有効な選択肢です。ホルモン療法が難しい方にも、無理なく自然に過ごせる支えとなるでしょう。

滋賀夕刊掲載【第282回】漢方薬のおはなし